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虹の彼方 18




それにしても、凄い量が揃えられている…

あまりの量に目移りがして、
どれが良いのか分からない…。




それに…隣に雲雀さんがいるので、妙に緊張する。

でも、早く選ばないと…
ご機嫌を損ねそうだし…どうしよう。






そんな私の心の中の焦りに気が付いたのか…
雲雀さんが、先ほどよりは、やや優しい口調で話掛けて来た。


「焦る必要は無い。じっくり見て好きなのを選べば良いから。」
「…数は、シーンに合わせて5種類程選んで。」



「…え?5ツも…ですか?」





「今、出席予定のパーティ以外にも…」
「個人宅でのプライベートな集まりに、招かれる可能性もあるしね。」

「念の為だよ。」
「目立ちたい時や印象に残りたい時に、和服姿の女性を連れていると効果抜群だしね。」




「…分かりました。」



それを聞いて納得した私は素直に選びだした。

雲雀さんの口調が、先ほどより少し優しくなった事もあり、
ホッと内心で一息付いた。

…良かった。
まだ怒らせた訳ではないようだ。







にしても雲雀さんの頭の中では、
既にあちらに行った時の、様々なシュミレーションが出来ているらしい

…流石、抜かりがない。




シーンに合わせて、か…
でも、どんなシーンが想定出来るだろうか…

子供の頃、欧州に住んでいた時に…
両親に連れて行かれて、様々なパーティには参加した事がある。
大きな社交場のパーティから、個人宅での小さな集まりまで、
そこそこの経験があるが…


でも、あの時はまだ子供だったので、
あまり深く考えずに、両親が用意してくれたドレスで参加をし
美味しいお料理を、ただ堪能していただけだった…


う〜ん…。

どうしよう…。





迷っていると、横から声がした。


「取り敢えず、タイプの違う生地と、違う色味になるように選べば良いよ。」


そう…雲雀さんが助言してくれた。








その後、自分なりに様々なシーンを想定して考え…
何とか反物を5種類選んだ。


購入する反物が決まった所で…
お店の人が、それに合わせた小物を色々と持って来てくれる…
襦袢から帯、草履、髪飾りまで…色々と。

全ての小物をそれぞれに合わせつつ、意見を聞いてくれる。



「この生地には、こちらか、こちらの帯が宜しいかと思いますが…どちらがお好みですか?」



「ええと…では、…右の方ので。」



「畏まりました。…こちらの帯だと、帯留めは…これは如何でしょう?」



「はい、それで良いと思います。」







「では、此方で。」
「この組み合わせには、草履は…この辺りが宜しいかと。」



「そうですね…。う〜ん。…これにしようかな?」



「はい、こちらの物ですね。」
「…良い組み合わせになったと思います。今、並べてみますね。」






そして、決まった組み合わせを全部、綺麗に並べて見せてくれ…

「…如何でしょうか?」と聞かれる。




チラと雲雀さんの方を見ると…小さく頷いてくれた。

それを見て、安心して頼む。


「はい。この組み合わせでお願い致します。」








と、そんな事を繰り返し…
何とか全ての組み合わせが決まった。

最初こそ、目の前の高級品達に気後れしそうだったけれど…
終わる頃には、すっかり感覚がマヒしてしまい
私のお給料を遥かに超えるお値段の帯も、
ごく普通に気軽な気持ちで選んでしまっていた。

あまり雲雀さんを待たせる訳にもいかないし、…これで良いのよね?






商品を選び終わった後は、採寸をして貰い…

選んだ反物や帯の仕立てについて、
雲雀さんが…『出来るだけ早く仕上げて』と、頼んだ後は
来た時と同じく、店長さんにお見送りをされて、お店を出た。





…にしても…
今の…反物代だけでも、軽く数百万は超えている筈。
いや、もしかしたら…既に一千万超えているかも。

小物まで全部入れると、凄い金額になる気がする…
詳しい値段が分からないから憶測だけど。



この後、パーティドレスや靴や鞄も買って貰う事になっているのに…
着物だけで、こんなにお金を掛けてしまって…
本当に良かったのだろうか。



後で、請求書を見た草壁さんが
悲鳴を上げるのではないだろうか…

なんて…ついつい下世話な事を、移動中の車の中で考えた。









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