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虹の彼方 166






「さっきの優衣の話では…」
「君は初めて出逢った日から、僕にある程度の関心を持ってくれていたようだけど…」
「…それは、僕も同じだったよ。」

「初めて沢田綱吉の秘書として、僕に挨拶をして来たあの日」
「…君の持つ、あまりに爽やかで暖かい雰囲気に驚いた。」

「そして、そんな君をスカウトしたのが」
「…あの男であると聞いて、その事にも少し興味を持った。」




…恭弥さんって…
リボーンが絡む事には、敏感に反応を示すらしい。

それだけリボーンの事を“買っている”という事なんだろうな…






「次に会った時には…君が淹れてくれたお茶を飲む機会があった。」
「…そのお茶の美味しさに、僕の興味は更に高まったんだ。」

「そして、同じ頃から徐々に…ボンゴレの書類が“読む相手にとって良い物”に改善されて行ったり」
「確認や注意が必要な事項については、見落としがないように工夫されたレイアウトになったり」
「以前の物とは比べ物にならない程に…素晴らしく創意工夫された物へと改定されて行った。」


「急に変化し始めた原因を、哲に調べさせたら…」
「その殆どは、優衣の発案やアイデアである事が分った。」

「その頃から僕は、本格的に君に興味を持って…観察を始めたんだ。」
「そして優衣の事を知れば知る程に気に入って…更にもっと君の事を知りたくなった。」





丁寧に淹れたお茶や、書類の書式を工夫して変更した事が…
私に興味を持つ切欠になっていたんだな…と
少し新鮮な気持ちで話を聞く。





「…自分の気持ちを自覚してから、暫くの間、この気持ちをどうするか考えた。」
「しかし、どう考えても…遠回しに伝えたのでは伝わる気がしなかった。」

「かと言って、直球でストレートに伝えたとしても…君の側には、受け入れる器があるようには見えない。」
「そこで僕は…一計を案じる事にした。」



「君に、もっと僕自身を知って貰い…」
「同時に、僕の気持ちを受け入れ可能な状態になって貰う為にどうするか。」

「先ずは、もっと君と接触する機会を増やしたいと考えた。」

「つまり今回の仕事は全て…その為に組んだ物で…」
「優衣と一緒に行動する為に良さそうな内容を、選んだ物なんだ。」







今回の仕事の最初から振り返っている最中に
“もしかしたら”と感じていた事を
恭弥さんの口からハッキリと聞いて
『あぁ、やっぱり…そうだったんだ』と思った。



平たく言えば…
恭弥さんの気持ちを私に伝える為に…
私に受け入れて貰う為に…

あまりに色恋沙汰に関心も知識もない、恋愛にとても初心な私が
恭弥さんの気持ちを受け入れ可能なレベルに
成長する為の舞台をわざわざ作った…という事のようだ。






「ついでに…どうせなら…」
「仕事で一緒にいる間に、普通に付き合っている者達や…世間の恋人同士がぶつかりそうな事例も、」
「一緒に経験出来そうな内容になると良いと思ったので」
「その為に…恋人で婚約者設定にして、それなりの行動を取った。」





…ええと…つまり…
“恋人疑似体験”が出来るように意識して仕向けたという事?

確かに設定上そうだっただけでなく
…今思えば、実際に…そうなっていたとは思う。



恭弥さんの迫真の演技…という名に隠れた本気の言動に…
いちいち反応していた自覚はある。

優しく甘い言葉や仕草にドキドキしたり…
他人が恭弥さんに向ける目が気になったり…
変に拗ねてみたり
…兎に角、何時も恭弥さんの事が気になっていた。





「折角、一緒にいる時間が長いのに…」
「君に気持ちを伝える為の“土壌を整える”だけでは勿体無いからね。」

「勿論、優衣の仕事の経験値も上がるような内容にしたのは…言うまでもないよね。」
「…その点も、抜かりはないよ。」



「更に…君のご両親の命を奪う切欠になった者達に、制裁を加え…その原因の処分も済んだ。」

「君が、本当の意味で…過去の痛ましい事件から卒業し、未来に向かって前進出来るようにしたつもりだよ。」







やっぱり恭弥さんって…やる事のスケールが大きい…

言っている事は判るけれど、
その為に…ここまでするのが、ちょっと信じられない程だ。


今回の仕事が先にあって、それを利用したのではなくて…
私への告白の為に、そして私自身の為に
…今回の仕事を“敢えて創った”のだから凄いよね。
仕事の方が“ついで”というか“オマケ”だったなんて。

でも、そう言いつつ…
ちゃっかり、しっかり…自分の欲しい情報をGETしている所も、流石だ。



つまり、ちゃんと…
自分の為にも、私の為にもなる様に…考えられていたんだ。

最初の買い物の時から…
恭弥さんの用意周到さには驚いていたけれど
…これは…完璧に想像以上だったな。










「…さて…これで…全てのネタばらしと、答え合わせは…一応済んだね。」




そこまで話した恭弥さんが、一度言葉を切って、
自分のグラスにシャンパンを注いでいるのを見て


「…はい。」

と小さく頷いて同意した。






それを聞いた恭弥さんは…
グラスのシャンパンを一気に飲んで喉を潤すと
そっとテーブルにグラスを置き…

真っ直ぐに私を見て…じっと視線を合わせて来た。





光を帯びて…
少しだけ艶やかにも見える灰蒼色の澄んだ瞳が

…真っ直ぐに見つめて来る。





しばらくの間…その美しい眼をじっと向けた後…

とても優しい口調で…





「…優衣…。…僕は、君の事が好きだ。」
「改めて…正式に僕と付き合って欲しい。」

「僕の恋人に…なって欲しい。」





(……っ!…)





今までにない程に熱く情熱を感じる眼差しで

…じっと見られて…

一気に体温が上昇するのを感じる。





心臓の動きも一気に早くなった。

答え合わせをしたのだから…もう解っていた筈の恭弥さんの気持ち。





でも、それを…本人の口からハッキリと…
こうして真正面からストレートな言葉で言われると…



嬉しくて込み上げて来る喜びと…

そんな、何ともドキドキふわふわした感覚と共に



…少しの、戸惑いも感じる。


















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