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虹の彼方 164





先程まで少しだけ感じていた酔いが…
緊張の為に完全に冷めてしまって…
逆に何時もより、とてもクリアーな頭になったような気がする。



…話す内容は…
ボンゴレアジトで、初めて恭弥さんの姿を見た時の事から話を始めた。

今まで、私が“表面上”で考えていた事に合わせて
その時々の心の奥の内心で感じていた事も
自分で発見出来た範囲で、なるべく丁寧に話して行く。





今までの事を振り返る中で…
『何が切欠で、何時から…恭弥さんを好きになって行ったのだろうか?』
…という自分自身の疑問の答えを探して
何度か記憶を辿って行ったけれど…
でも“何が”“何時から”という明確な事などはとうとう解らなかった。

何時か、恭弥さんが言っていたように
『自分でも知らない間に恋に落ちていた』ようだ。




そもそも…
ボンゴレアジト内で初めて会った時から、
言い様のない、とても強烈な印象を持ったのを覚えている。

その射すように鋭い瞳と、全身から感じる…
厳しくも思える程の、あまりに凛とした佇まいに…、一瞬で目を奪われた。

形容するのが難しいと感じた程の…
強いインパクトを感じる出逢いであったのは間違いない。



ツナの秘書として紹介されて挨拶をしただけなのに…
忘れられない程に…
心に深く“雲雀恭弥”という人の存在を刻みつけられた。

その後、何度か会っているけれど…
どの時も、説明の難しい小さなドキドキ感があったのを憶えている。





でも、私が明確に“好き”という感情を持ったのは…
もっとずっと後である事は間違いない。

だって…
今回の任務の為に初めて一緒に買い物に行ったあの日は
まだ、様々な“怖い噂”で名高い“あの雲雀さん”という風に見ていたので
ビクビクして恐々接していたし、異様に緊張もしていた。

それが…逢う回数が増し、
恭弥さんの事をより深く知るようになるに連れて…
自分では気が付かない内に、徐々に惹かれて行っていたのだ。







ゆっくり詳しく丁寧に…
その時々に私が感じた事、振り返った事で気が付いた事などを話す。



一緒に欧州に来てからの事は、特に丁寧に話しをした。
ドイツの終わり頃から感じていた「モヤモヤ」の正体も…今なら良く分る。

あの頃から私は…
ハッキリと恭弥さんに淡い恋心を抱いていたのだろう。

そして同時に…
その心を、心の奥の奥に仕舞い込む為の“演技”も同時に始めた。
無意識に…
自分で自分を騙す演技を始めたのは、あの頃だろうと思う。




英国では…
優雅に完璧にダンスも乗馬も熟してしまう紳士な恭弥さんに
改めて感心し、同時に恋心を…更に募らせていった。

ニックに襲われそうになった時の…あのどうしようもない嫌悪感とは
真逆の感情を恭弥さんに対して感じている事を
…内心では、確かに自覚していた。




イタリアでアレックス夫人に、
恋心を抱いている事をハッキリ指摘されてからの私は…
自分の心を偽っている状態から解放された事で、
それまでの私より…大胆になったと思う。

その大胆さのお陰で…リボーンに指摘されたように…
今までの自分なら選ばないような、大人っぽく女性らしさを強調した
少々妖艶に見えるドレスを着てみたり…

恭弥さんとの会話で…
思いっ切り恭弥さんを褒めるような熱弁をしてみたり
そうかと思うと…
恭弥さんの一言でポロリと泣いてしまったり。


世間で言う所の…
恋する乙女の状態に、ごく自然となっていた。
誰かに教わった訳でもないのに…
恋愛に超疎い私でも、あんなに変化がある事が…少しだけ、不思議。




オーストリアに来て…
恭弥さんに、優しく細やかに看病して貰った事で
表面上では、まだ恭弥さんの気持ちを認めてはいなかったけれど
心の奥の内心では…
恭弥さんも私と同じような気持ちでいてくれるのを感じて
…密かに再確認して。

その安心感から…以前では考えられなかったような
恭弥さんに反抗的な態度を取る事に、あまり怖さを感じなくなった。

その事を恭弥さんは「成長の証」と表現したのだろう。








数日間を掛けて、振り返りと反省をした結果に気が付いた事を…
全て、包み隠さずに正直に…恭弥さんに話した。

恭弥さんは、
私が話をしている間は一切口を挟む事なく…
時々シャンパンを飲みつつ、黙って静かに聞いてくれた。

途中で話の腰を折られる事もなかったので
話したいと思っていた事は全て話す事が出来た。





「最後に…改めて、心よりお詫び申し上げます。」

「無意識であったとは言え…」
「私は自分の事だけを考えて、自分を守るつもりで…結果として恭弥さんを傷つけました。」

「とても酷い事をしていたと反省しています。」
「…本当に…申し訳ありませんでした。」



そう言いつつ、ソファーに座ったまま、深々と頭を下げる。

その後に続いて…



「そして…こんな私を、とても忍耐強く、優しく見守って下さっていた事に対して…」
「心から、お礼申し上げます。」
「お陰様で私は…ゆっくり“成長”する事が出来たと思います。」

「初めての体験に戸惑っている私を…暖かく、そして忍耐強く見守って下さり…」
「…本当に、有難うございました。」



再び、頭を下げて…
その後、隣に座っている恭弥さんに、しっかりと視線を向けた。









最後まで、言いたい事を全部言えた事で
とてもスッキリとした気持ちになれた。

やっぱり…自分の言葉で話をして良かった。





そう思っていた時…

私の長い話を最後まで、しっかり聞いてくれた恭弥さんが
…ゆっくりと口を開いた。



「…随分前の…僕達が出逢った頃から全てを、振り返ったんだね。」



「…はい。何度か内容を反芻して、より深く自分を見詰めようとした時に…」
「やはり出逢った時からの、私の感情も振り返りたいと思いましたので。」



「…そう。結論から言うと…とても深く自分の心を見詰めて顧みる事が出来たようだし…」
「それに、僕が言いたかった事や、僕の心情の推測も…ほぼ、その通りだ。」
「君が、自分の心に素直になれて…」
「且つ、自分の奥深くに潜んでいた本当の気持ちにも気が付いた点は…流石だと言っておこう。」



…あぁ、良かった。
どうやら“答え合わせ”は正解だったようだ。

これで、もしも…的外れな事を言ったのだったら
…もう、この場にはいられない所だった。







今までの話の中で、ハッキリ
『恭弥さんの事が好きです』…とは、まだ言っていない。
自分の気持ちに気が付いた…とか、そんな表現しかしていない。


同じように…
恭弥さんの側の気持ちも…ハッキリとは言っていない。
これは、私が言う事ではないと…思うから。



でも、恭弥さんには当然解っている事だろうし…
事実上の“告白の場面”でもあるので、そのドキドキ感と…
答え合わせが正解かどうかのドキドキ感と…
両方のドキドキが混ざり合った少し複雑な心境の中…
内心で、ホッとしていると…





「…じゃあ、今度は僕の番だね。」
「僕の話も少し長くなるけれど…聞いてくれるかい?」




(…っ!…)



今度は…恭弥さんが話してくれるようだ…。


それを聞いて少し心拍数が上がる。






さっきより、ドキドキ音が煩くなった胸を抑えつつ

…しっかりコクンと大きく頷いた。

















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あきゅろす。
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