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虹の彼方 150




……うぅっっ……



…こ、この状況は…非常にマズイ…気がする。





で、でも!
本当に私には訳が分らないんだし
…何と言われようと、分らない物は分らない。


本当の本当に…私は恭弥さんを怒らせたい訳でもないし
何かをワザと知らないフリをしている訳でもないし
当然、喧嘩を売りたい筈なんてないっ!


そう思って…意地もあり若干ムキになって
今までになく強い意志を含んだ視線で恭弥さんを見返した。






一方の恭弥さんは…

何とも不敵な笑顔が…怖かった。



恭弥さんのこんな“笑顔”は…とても怖い。

“さて、これからどうしてあげようか”
と考えている時の恭弥さんは…こんな風に少し嬉しそうな顔をする。

その先の展開を考えると脚が竦みそうになるけれど…
いや、ダメよ私!ここで怯んではダメ!




大体、恭弥さんは何時も思わせぶりな事ばかり言って…
ハッキリした核心部分を言ってくれない事が多い。
私の為を思って…
そうしてくれている部分もあるのだろうけれど…

でも、でも…そのお陰で、今現在…
こんな風に“訳が分らない内”に喧嘩のようになってしまった。


今後の事もあるし、ここは簡単に引かないで
自分の気持ちを言う良い機会なのではないだろうか?







そう思って…
一度下を向いて小さく息を吸って…

思い切って顔を上げて
恭弥さんの方を真っ直ぐに見ながら…口を開く。



「恭弥さんを不快にさせてしまった事は…お詫びいたします。」
「でも、先ほども言いましたように…私はワザとそんな事をしている訳ではありません。」
「本当に…恭弥さんの言いたい事が分らないだけなんです。」


そこまで話して、一旦言葉を切るが
…恭弥さんは黙ったままだ。

そこで、再び話をはじめる。


「そもそも恭弥さんは何時も…」
「肝心な核心部分について、ちゃんと説明して下さらない事が多過ぎます。」
「私が鈍いだけなのかもしれませんが…」
「でも、だからこそ…もっとハッキリ教えて下されば良いじゃないですか。」

「そうすればきっと…私にも恭弥さんが真に言いたい事が分るんじゃないでしょうか。」


そう言って…目の前の恭弥さんじっと見た。






私の話を黙ったままで聞いていた恭弥さんは…
無言のまま自分のワイングラスにスッと手を伸ばし
そのままワインを半分程、一気に飲む。

グラスを置き…
まるで自分を落ち着かせるように
ほんの小さく深呼吸をして…話をしだした。



「…今まで君に…一番大事な核心部分まで話せる状況だったなら、とっくにそうしていたよ。」
「君の側に“受け入れ準備が出来ていない”から…話していないだけだ。」

「本当は、僕だって全部話してしまいたいさ。」
「そう出来れば、どんなに楽だろうかと…何度思った事か。」
「…それぐらいの事も…分からないのかい。」





(…っ…)

最後の…酷く冷たい言い方に地味に傷付く。


…うぅぅ…やっぱり、私の側の問題が大きいみたい。
でも、でも…
そう聞いても“じゃあ、どうすれば良いのか”がまるで分らない。





そこで、勇気を出して再び口を開く…


「私の方に問題があるのだとしても…こんな事になって…」
「どうして良いかも分らないままで…」

「あの、せめて…今後どうすれば良いか、もう少しヒントなり解決の糸口なり下さい。」



そう話して、じっと恭弥さんを見詰める。
恭弥さんは、無表情のまま…



「今の君に…僕から何かアドバイスをする気はない。」
「それぐらい自分で考えなよ。」



(…っ…)


そんな…なんて冷たい返答なのだろうか。

全く分らないから、少しでもヒントが欲しいと言っているのに
…この状況で突き放すなんて。



「…………。」



でも…だからと言って
流石にこれ以上恭弥さんに対して、反抗的な物言いは出来ないだろう。

恐らくは、今の私には理解出来ない理由があり
…そうしているのだろうとは思う。







理性では、そう思うのだが
…感情的にはちゃんと納得出来きないまま…
とても悶々とした気持ちを抱えて…恭弥さんをじっと見る。

そんな私の様子を見て
恭弥さんは少し面白そうに目を細めながら…




「…へぇ…随分と反抗的な目だね。」
「さっきの逆切れといい…今の態度といい…僕に対して、そんな事が出来るなんて面白いね…君は。」

「まぁこれも…少しは成長した証だと受け取ってあげる。」




「…………。」

小馬鹿にされたような言い方に…
正直少しムッとしたが、言い返す言葉も見つからないので無言。







すると…小さな溜息の後に…



「…優衣。今の君が僕に向けている感情には感心しないけれどね…」
「でも、そんな風に…自分の感情に正直になる事や…」
「相手から受ける“印象”を素直な気持ちで受け止める事は…大事な事だと言っておこう。」



…ん…?
自分の感情に正直になる?
相手から感じる物を、素直に受け止める?

私は何時だって…そのつもりなんだけどな。
恭弥さんには…そう見えていないという事なのだろうか?






そう考えていると…



「全く…僕は、君には随分と甘いな。」
「…結局、ヒントを2つ教えてしまった。」


溜息と共に…そう話す恭弥さんを見て

…え?
ヒントがあったの?

と疑問に思う。



今の話だろうか?
その前のだろうか?両方なのだろうか?

言われた言葉を思い出して、頭の中で数度反芻して…考える。
…ええと…ええと…?






う〜ん…と考えて
多分これがヒントかな?と思う物を選んだので
…確認してみる。



「あの…ヒントとは…恭弥さんに反抗的な態度を取った事が…私の成長の証、という事と…」
「自分の感情や相手から感じる物に素直になる事が大事、という事の2つ…ですか?」



一生懸命に考えて…思い切って尋ねたのに…



「…さぁね。」



と…ニヒルな笑顔で答えられて
少しだけムッとして見返す。

もうここまで話したのだから
ヒントぐらいハッキリ教えてくれても良さそうなのに。
…やっぱり…恭弥さんって、時々意地悪だ。








“フフンッ”という感じの恭弥さんを
ごくごく軽く睨むように見ていていると…

恭弥さんが…ふと真面目な顔になり…
スッと私を真正面から見て来て…僅かに怖いオーラを放ちつつ…



「…優衣…。念の為ハッキリ言っておくけど…さっきの君の案は全面的に却下だ。」




「…………。」



きっぱりと私の案を
“全くダメな案だ”と何時になく強く否定された事に対して…
“そんな言い方しなくても…私なりに一生懸命考えたアイデアなのに”
…と、少し恨みがましい目で恭弥さんを見返した。







そして、そんな…
如何にも喧嘩中であるという事が周囲の人にも分かるであろう
剣呑な雰囲気の中で…

全く思い掛けない事が…起こった。












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あきゅろす。
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