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虹の彼方 147




その数日後…
今度は、その時にクラウスに紹介された人が
「僕のパーティに来ませんか?」
と誘ってくれたので参加する事にした。


クラウスも参加すると聞いたので、行ってみたのだが…
確かにクラウスも参加していたが…
オーストリアの社交界のメンバーが多く集まるパーティであり
参加人数がとても多いパーティの割には会場は狭くて
クラウスの近くに行く事すら困難な程の大混雑したパーティだった。


このパーティでは、クラウスと挨拶をする事は出来たが…
あまりに会場が混雑している事に加え
次々にクラウスに話し掛ける人が出てくるので
とてもではないが、ゆっくりと会話をするような雰囲気ではない。

…これでは、仕事にならない。

恭弥さんと、こっそりと視線を合わせ…
無理に接触をするのを諦めて、早々にホテルに戻った。






…う〜ん…。

最初の接触では上手く行ったが
その後が…なかなか思ったようには進んでくれない。


だが、出来るだけの努力をした上での事だから

「こんな事は良くある事だし、気にしなくて良いよ。」
「次回にチャンスを生かせれば良いだけだ。」

…と恭弥さんは言う。


尤もな言葉だとは思う。
だけど…私の中では前途多難になりそうな
…嫌な予感が…少ししていた。








更に後日…
今日も、最初のパーティでクラウスが紹介してくれた相手で
先日とは別の人から誘われた小さなパーティに来ている。

今回のは少人数のもので…
誘ってくれた相手の仕事絡みのメンバーがメイン。

これなら深い会話をする事も出来るし
仕事に託けて情報の在処を聞き出す事も可能かもしれないっ!


そう思って、意気込んで出席したのに…

…待っても待っても…クラウスが来ない。


彼が参加予定である事は
財団の調査員が調べてくれたから確かな筈なのに
…どうしたのだろうか?

と思って過ごしていると…
草壁さんからメールで
『クラウスは急用が出来てパーティの出席を断ったらしいです』
と緊急連絡が入った。

その連絡メールを見て恭弥さんと一緒に
…小さな溜息をついた。






他の日には…恭弥さん1人だけで
クラウスの企業グループの傘下のひとつの会社に“仕事の商談”に
出向いたのだが、クラウスと接触する機会はなかったらしい。

その会社の担当の人は、クラウスから
“くれぐれも失礼な対応にならないように”と言われていたらしいが
商談の場に臨席を期待していたクラウス本人は
他の仕事の為にフランスに出向いている最中であり
会う事が出来なかったという事だ。







…どうも、タイミングが上手く合ってくれない。

難しい相手だとは知っていたが
わざわざ誰かが意地悪でもしているのではないか?
と思う程に、あれもこれもタイミングが合わない。


クラウスは、聞きしに勝るワーカホリック(workaholic)で…
少しでも仕事関連で異常があると
直ぐに自らが出向いて解決を図るように動くようだ。

その為、予定のスケジュールが狂う事が多いようだ。



…まぁ…こんなターゲットだと分ってはいたし
仕方ないだろうか…

ガッカリしつつも、そう思って…
一生懸命に、気持ちの切り替えをするように努めた。








その後、別のパーティやチャリティー会場など…
兎に角“クラウスが出席予定になっている物”に
片っ端から参加してみるのだが
相変わらず“深い会話をする事態”にはなってくれない。

やっと会話出来る機会が巡って来ても
クラウスの周囲には何時も人が大勢いるので
情報の在処に繋がるような会話を仕掛ける隙もないのだ。



これでは、如何に恭弥さんが会話術に優れていても
…聞き出すのは無理だ。

絶対に酔いが回るまでは飲まないクラウスと
その他大勢の人が何人もクラウスの周囲を囲んでいる中で
超機密事項に関する会話をする事など出来ない。

下手に話題にすれば
きっとクラウスにも他の人にも怪しまれてしまうだろうし
もしかしたら…
私達の正体に気が付く人物がいるかもしれない。





今までのドイツ、英国、イタリアでの仕事が予定より早く済んだため
オーストリアには
元々の予定より前倒しで10日程は早く入国している。

その為、時間はあるとも言えるが…
何しろ直前でのイタリアで“派手で目立つ事”をしてしまったので
出来るだけ早目に仕事を終わらせてしまいたい気持ちもある。

出来れば急ぎたいのに上手く進んでくれない場面ばかりが続く為
少し気持ちが沈んでしまった。



そして、こんな仕事に慣れない私は…

知らず知らずの内に…

自分では気が付かない“焦り”という感情を持つようになっていた。








そんな中…恭弥さんと相談の上…
少しでもクラウスと接触する機会を増やす為に
クラウスお気に入りの数店のレストランに食事に行ってみたりもした。


朝食の時間や昼食では
出会ったとしてもゆっくり会話出来ないので
夜の時間に行ってみるのだが…
夜の食事の場所は決まっている訳ではないし
それに、そのレストランに来るとしても時間も分らない。

クラウスは、何時も予約なしでフラリとお店に行くのだ。



その為、適当に目星をつけて
“クラウスお気に入りのレストランで夕食を食べる”
という事を繰り返している。


具体的には…財団の調査員からの情報を聞きつつ
会社を出た時間やクラウスの向かった方向からの情報を元に
恭弥さんと相談の上
“たぶん今日は、○○レストランに○時頃だろうか?”
と推測してみるのだが…

クラウスは、一度退社した後の移動中でも
何か思いついて再び仕事の為に会社に戻る事があったり、
誰かから連絡が来たのを切欠に
食事に行く時間を大きく変えたり、お店を変えたりするので
そうそう簡単には“同じレストランに同じ時間”に行くのは難しく…
“鉢合わせ”を演出したいのに上手く出来なかった。




更には
…上手く同時間に同店で会えた時も…
行ってみると『予定になかった急な会食』として誰かと会っていたり
私達が入店する前に、既に同じお店にいた知人を見つけ
その人と同席で食事をしていたり…

…と、ことごとく私達の接触は失敗に終わってしまっていた。








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(お知らせ)

この後にお読み頂ける小話が「過去拍手の部屋」にあります。
宜しければ、そちらもお読み下さい。











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あきゅろす。
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