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虹の彼方 143




初日の観光が平穏に終わり…
ホテルに戻った後、ホテル内のレストランでお食事を済ませ
その後はバスルームにゆっくり入り…

何時ものように、お風呂上りに
ワインを飲みつつ地元の新聞を読んでいる恭弥さんの所に行く。



「君も少し飲むかい?」


と、ワインを勧められたので軽くグラス半分だけ飲んだが…


少し前から…
どうもあまり身体の調子が良くないような気がする。

観光している間と
夕方までは比較的元気だったのだけれど…
夜になる頃には、急速に疲れを感じるようになって来た。



イタリアを発つ前日に
1日ゆっくりとした日を設けてもらい休んだのに…
まだ完全には、誘拐事件での疲労が取れていなかったのだろうか。
それとも…
約2か月分の旅の疲れが貯蓄されて出てきた所なのだろうか。




でも、恭弥さんに心配をかけたくないし…
今日はさり気無く早目に休んで、しっかり体調を整えよう。

そう思って…観光で少し疲れたという事にして、
その日は、あまり飲まずに早々に休ませて貰った。





++++



++









翌日…額に何かの感触を感じて、意識がゆっくり浮上した。

…が…全身が怠くて辛い…


…どうしたんだろう? と…
ボッーとした頭で考えつつ、目をそっと開いたら…

すぐ目の前で灰蒼色の瞳と目が合って…少し驚いた。 



…あ、れ…?

恭弥さんが居て、私の額に手を当てている?




「目が覚めたかい?」



「…………。」



返事をしたいのに、頭が重く感じるし意識も少し朦朧としていて
…言葉が出て来ない。



そんな私を心配そうな顔で見て…


「随分熱が高い。…今までの疲れが出たんだろう。」
「何も心配しなくて良いから…2・3日ゆっくり休んで。」



…熱…?

…あぁ、そう言えば…身体が熱いような気もする。


この全身の怠さは…高熱が出たせいらしい。
どうやら私は、疲労が溜って風邪でも引いたらしい…



恭弥さんが私の寝室に居るという事は…
何時ものように朝起きる事が出来なくて寝たままの私を
心配した恭弥さんが私の寝室まで様子を見に来て…
私の異変に気が付いた。
…という感じなのだろうか。


ボンヤリした頭で、そこまで考えた所で
恭弥さんが…


「その熱では食欲はないだろうが…薬だけでも飲めそうかい?」


と声を掛けて来たので、ゆっくりと頷く。




そして、そのまま起き上がろうとしたら
…私の背中を支えてくれて起き上がるのを助けてくれた。

恭弥さんは、ベッドの脇にある
サイドテーブルに用意されていた薬と水を取り私に渡してくれ
薬を飲むように促して来る。

私は、起き上がった事でクラクラする頭を重く感じつつも
薬を受け取り、水で胃の中に無理矢理流し込んだ。







その後、恭弥さんが支えてくれて再びベッドに寝かせて貰い
布団を綺麗に整えてくれた後に…


「何かあったら…このベルで僕を呼んで。」


そう言いながら
サイドテーブルの上に置かれた執事を呼ぶ時の為のベルを示す。

“はい。わかりました。”という気持ちを込めて頷くと…
恭弥さんは、私の目の辺りにかかっていた髪を
そっと優しく手でかき分けてくれて…


「さぁ、ゆっくり休んで。」


そう言って、じっと私を見て来た。






恭弥さんの綺麗な灰蒼色の瞳が…心配そうな色を宿している。
何時もの迫力を感じる瞳とは違って、どこか優しさも感じる瞳。

心配をかけて申し訳ないな…と思いつつも…
頭が重くボンヤリしている為か、高熱の為か…
それとも薬の効果なのか…

目を開けていられなくなり…ゆっくりと瞼を閉じ、そのまま眠りについた。




++







その後私は…何度か意識が少し浮上する事があったが
基本的にはずっと寝ている状態。

高熱である事を心配した恭弥さんの指示で、
お昼前に草壁さんが医師を連れて来て…部屋で点滴と注射をして貰った。

お医者様の見立てでは、やはり「疲労が溜っている」という事と
「体力が弱った所で酷い風邪を引いた」のだろう…という事だった。


ぼんやりと説明を聞きながら
細菌やウイルス系の病気ではなかったので
恭弥さんにうつす心配がない事に、ホッと安堵した。







恭弥さんは…
私の高熱が続いていた間は勿論
注射や薬の効果で熱が少し下がった後もずっと…

その日の夜中も…何度も私の様子を確認しては、熱を測ったり
汗を掻いた顔や額を拭くための、暖かい蒸しタオルを持って来てくれたり…
数度、額に貼った熱冷まし用のジェルの交換もしてくれた。
(冷却ジェルは草壁さんが日本から持って来てくれていた物だ)




珍しく高熱が長時間出た事で…
全身の節々が痛く感じるようになってしまった。
身体中が悲鳴を上げているような感じだ。

正直な所…かなりキツイし、辛い。

意識も朦朧としており
ゆっくり何かを考える事は出来なかったけれど…

恭弥さんが付き添ってくれている事で、とても安心感があり、
身体的に辛い中でも…精神的にはゆっくり休む事が出来た。













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あきゅろす。
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