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虹の彼方 123





優衣が攫われた日の夜になり…

宿泊しているホテルに…
パオロが血相を変えて飛び込んで来た。


どうやら、ポルポ・ファミリーから
『優衣を攫ったという事と、早く目的の物を探さないとお前の恋人も攫うぞ!』
という脅しの電話が来たらしい。





非常に混乱した様子でオロオロしつつ
それでも必死に電話の内容を話すパオロ。

大体の内容を話しつつ半泣き状態で…謝って来た。





「…本当に、すみませんっ!!」

「まさか…まさか…こんな事になるなんて!!」
「全く何の関係もないユイさんを…誘拐するなんてっ!」

「今直ぐに、彼らが要求する物を持って行かなければ…ユイさんを殺すと言って来たんですが」
「でも、僕は…本当にソレが何処にあるか分らないんです。」

「ユイさんを無事に返して欲しければ…」
「3日以内に彼らの言う物を持って来いと言われたけど…」
「今まで、散々探したけど…どれも違うというし、見つける自信がありません。」

「それから…この話を警察に言えば…」
「警察内部には内通者がいるから、通報したのが分り次第、即座にユイさんを殺すそうです。」





そこまで一気に話した後
…絶望したように床に崩れて座り込んでしまった。








優衣のスマホで録音した内容では、優衣を何処かに
“売る”という会話があった。
が、彼女を殺してしまうというような会話は無かった。

恐らく“殺すぞ”というのはパオロを脅す為の言葉なのだろう。



一端、小さく溜息を吐き…パオロに声を掛ける。


「取り敢えず…ソファーに座って。」

そう言いつつパオロの腕を掴み
立ち上がらせて、やや強引に近くのソファーに座らせた。






そして…向かいのソファーに僕も座り
なるべく穏やかな声で話し掛ける。


「君の話は分かった。僕から幾つか質問がある。…答えてくれるね。」


俯いていた顔を少しあげ、僅かに頷くパオロ。







「先ず、ポルポ・ファミリーから…君が探すように言われている物の詳しい話を聞かせて。」



「…それは…正直、僕も良く分らないんです。」
「そもそもポルポの連中も良く分っていないみたいなんです。」
「でも…その内容は、とても大事で色々なファミリーに関わる重大な秘密なんだそうです。」



「具体的に、どこのマフィアに関わりがあるものか聞いたかい?」



「一番のメインはボンゴレというマフィア界の最大派閥に関する内容だそうです。」
「他には、そのボンゴレと非常に親密な関係のある…」
「隣街に拠点があるキャバッローネに関わる内容が多いそうです。」
「その他のマフィアも、全部…この2つの傘下のマフィアだと聞いています。」






ポルポが探している情報は
ボンゴレにもキャバッローネにも関わっている内容のようだ。
先日の…
哲がレストランで録音をしたポルポ幹部の会話の中にも
この二つの名前が出て来ていたし
…恐らくパオロの話している内容は間違いがないのだろう。


全く…ムカつく。

あの2つの組織に関わる情報を探す為に
…優衣が攫われたのかと思うと…非常に腹立たしい。








苛立つ気持ちを抑え…更に質問をする。


「で、君は…この事をお義父さんには話したのかい?」



「…いいえ…。義父は…大変なマフィア嫌いなんです。」
「僕が…マフィアと関わりがある事がバレたら…大変に憤慨すると思います。それで…言えなくて…」



「だが…こんな事態になったんだ。事情を話して協力を頼むのが一番良いんじゃないの。」



「…そうなのですが…、勇気が出なくて…。」
「それに先ずは貴方に…この事をお伝えしないといけないと思って。」
「電話を受けた後に直ぐにココに来ました。」



「そう。じゃあ僕と一緒に自宅に戻り…君からお義父さんに事情を話してくれるかい?」



(…っ!…)


ハッとして、顔を上げたパオロは
僕の目を見て観念したように…




「…そうですよね…。」
「こんな事態になったのに…内緒になんてできないですよね。」
「…分かりました。」
「今までの経緯を…義父と義母にも説明をして、協力してくれるように頼んでみます。」

「そうしたら、3日以内にソレを見つけられるかもしれないし。」
「…ユイさんも無事に返して貰えるかもしれない!」





アレックスに真実を打ち明ける覚悟が決まったらしいパオロは
希望の光が見えた!という表情をした。



だが…ソレを届けたからと言って
優衣を返すかというと…その可能性は低いだろう。

優衣を返す所か…届けに来たパオロや
下手をするとアレックス夫妻も一緒に闇に葬るつもりかもしれない。


あぁ…もしかしたら…
僕自身も“闇に葬るリスト”に入っているのかもしれないな。
僕の素性はバレていないようだし
普通の貿易商だと思っているだけなら…有り得る話だ。

情報を得た後は、関係者は全員消すつもりなのではないか。
ポルポの荒っぽいやり方を見る限りは
…その可能性が高いだろう。



“ソレを届ける”という名目でポルポの者と接触をすれば…
上手く行けば、優衣の居所が割れてくれるかもしれないな。

…ココはソレを利用させて貰うとするか。









直ぐに哲に電話をして…駆けつけた哲の運転する車で
パオロと一緒にアレックスの自宅に向かった。

事前にパオロから
『大事な話があるので起きて待っていて欲しい』
と電話で連絡をした上でアレックスの自宅に行ったので
到着してみるとアレックス夫妻が
簡単なお茶のセットを用意をした上で待っていた。


パオロと一緒に僕が来て…優衣の代わりに哲が一緒にいる事に
不思議な顔をしつつも笑顔でリビングに通してくれた。





哲をアレックス夫妻に紹介した後は…パオロが意を決したように…
今までの経緯を半分涙ながらに話した。

夫妻は大変に驚いた様子で話を聞き
…直ぐには、言葉も出ないようだった。



そして優衣が攫われた事と
『3日以内に“ソレ”をポルポに渡さないと優衣が殺されるかもしれない』
というパオロの説明を聞き…
夫人は息を呑んで…その後、泣き出してしまった。











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あきゅろす。
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