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虹の彼方 120




…暫くして…
公園で会った3人の女の身柄を確保したと連絡が入った。

最寄の空港から海外に飛び立とうとしていた所を
ギリギリのタイミングで、何とか取り押さえたという。




逸る気持ちを抑え…女達を捉えている場所である
財団系の会社が経営している会社の倉庫に
大急ぎで向かった。

そこには…
昼間、公園で…馴れ馴れしく僕に触れて来た3人の女達が
非常に怯えた様子で半泣きになり囚われていた。




一応、尋問官により一通りの尋問が終わった
という事で報告を受けたが…

どうやら、この女達は
『小遣い稼ぎ』を見知らぬ男に持ち掛けられ…
一時期の逃亡用の飛行機のチケットと幾らかの金を貰い
…あのような事をしたらしい。

相手の男は、あの直ぐ近くで会った初対面の男だったようで
…名前も素性も何も知らないと言う。

念の為に3人の素性を調べたが、親兄弟親戚まで含め
全くの一般人との事だ。





僕の姿を見た女達は
…怯えつつも泣きながら謝罪をし…


「知らない男に、指示を受けて…そのまま実行しただけなんです!」

「まさか奥さんを誘拐するのが目的だとは知らなかった!本当なの!」


…と訴えて来る。





込み上げる怒りを必死に抑え…無言で睨んでいたが…


「…本当にごめんなさい!」
「奥さんを探す為なら、何でも協力します!」



と涙ながらに言う女達を見ていて…
『嘘は言っていないようだな』と思うと同時に
…ふと…
優衣の姿と重なり、怒りの感情が少し落ち着いて来た。




彼女達も“騙されて協力させられた被害者”
という事が出来るかもしれない。

何も知らない通りがかりの一般人が
お金に釣られ事件に巻き込まれただけのようだし
このまま…
こんな倉庫で拘束しておくのは問題もあるだろう。


それに優衣がこの話を聴けば
”彼女達を許して解放してやって欲しい”
…というのは目に見えている。





ひとつ、小さな溜息をついた後に…


「…哲…。彼女達に、ポルポ・ファミリーの男達全員の写真を見せて。」
「その中に、その男がいないか…良く見て貰って。」



「…はっ!」



「それが終わったら…優衣が見つかるまでの間は彼女達とすぐに連絡がれるように手配して。」
「それが終わり次第、解放して良い。」



「分かりました。」



「僕は一旦ホテルに戻るから…後を頼んだよ。」



「了解しました。何か分かりましたら、直ぐに連絡を入れます。」











一端ホテルに戻り、着替えた後に
これからに備えて持ち物などの準備をしつつ、様々に思考を巡らす。


先程は、咄嗟に…ポルポの仕業だと思って
あんな指示を出したが…本当の所はまだ何も解っていない。
己の勘で…ポルポが一番怪しいと思っただけだ。

僕達はアレックスとパオロに接近していたし
自宅にまで行ったので…目をつけられても可笑しくない。




だが、それだけの理由で誘拐までするだろうか?

もしポルポの仕業だとすれば
優衣を誘拐した理由として一番考えられるのはパオロを脅す為だ。

又は、優衣を返す代りに
直接アレックスに欲しい情報を渡すように連絡してくる可能性もあるが…
だが、それなら優衣ではなく
パオロの恋人を誘拐した方が良い筈だ。



何故、優衣なのか?と考えると…
パオロが知っている人物を誘拐して見せて
『本当に恋人を誘拐するぞ』と脅す為の方が濃厚だろう。



パオロを追い詰めて…
このままアレックスに内緒で探すか
それともアレックスに打ち明けて渡してもらうか。

どちらの行動をパオロが取るにしろ
動揺し過ぎて使いものにならなくなるのを防ぐ為に
『知り合いというだけの優衣』を攫った可能性が高いだろう。


もし恋人を本当に攫って脅したら…
あの性格では、精神的に追い詰め過ぎて使えなくなる可能性もある。
それを心配して、パオロに対して一定のインパクトを
与える事が出来るのなら…誰でも良かったのかもしれない。







もし、その線が違うというなら…
考えられるのは先日のパーティでの事だろうか。

あの時は、つい理性が崩壊してしまって
あの男のペースに乗り、目立ち過ぎる行動をしてしまった。



その結果…僕達がボンゴレやキャバローネと
関係がありそうだと悟った者も多かっただろう。

その気になって調べれば…
優衣がボンゴレ・ボスの秘書をしている者である事は調べがつくだろう。
となると…もしかしたら
ボンゴレ絡みで恨みがあるような者達である可能性もある。




…または…
キャバローネのボスである跳ね馬とも一緒にいたのを見て
利用できそうだと思った者の仕業であるかもしれない。


あるいは…今まで上げた懸念の全てが
微妙に絡みあっているという可能性も否定できない。

もしそうであれば
簡単には解決しない可能性も高くなる。




何れにしろ…
相手はマフィアである可能性が一番高いだろう。





…優衣は…無事でいるだろうか。

どうか…無事で居て欲しい。



彼女に危害が加えられていない事を…強く願う…。





そこまで考えた所で
…軽く血が滲む程に…強く手を握り占めていた事に気が付く。


(…………。)


血が滲んだ己の手を、若干投げ遣りな気持ちで眺める。

今まで、これほどの精神的苦痛は
…味わった事がない。



“胸が張り裂けそうだ”とは
こんな時に使うのか、と…ぼんやりと考えた。






昔は、あまり大勢で群れると蕁麻疹が出る程に
嫌だったものだが…
そんな程度の苦痛とは比べ物にもならない。

闘いの中で不本意な結果になった時ですらも…
悔しい気持ちはあったが、今程には苦痛を感じた事がない。



表現のしようのない…
悔しさと後悔と懺悔にも似た想いと共に…

この世の全てを破壊し尽くしかねないっ!
と感じる程の
怒りがプラスされた複雑な想いが溢れてくる。




心の中で荒れ狂う感情を抑えるので…精一杯だ。




じっとしていると…気が狂いそうに思える。








(…っ…)


何か…、何でも良いから行動をしていたい…


そう思って…


再び、何か情報が入り次第
すぐに出て行き行動できるように…

様々なケースを考えた装備の準備を続ける事にした。
















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あきゅろす。
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