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虹の彼方 119




恭弥さんと一緒に写真を撮れる!と大喜びの3人の内
2人の女の子が恭弥さんの左右の腕を
それぞれ自分の腕と組んで…


「向こうの噴水の前で撮りましょう!」

と言いつつ…ぐいぐいと引っ張って行く。




恭弥さんは、私の方をチラリと見て
…嫌そうな顔で…
如何にも仕方なさそうにしつつ
女の子達に引っ張られるまま噴水の方に歩いて行った。

私も写真を撮ってあげる為に付いて行こうとしたら
…もう一人の女の子が…


「あ、奥さんは大丈夫です!」
「交替で、旦那さんの両側で写真を撮らせて貰いますので♪」


と言って…先に行っている3人を追いかけて行った。





(…………。)


残された私は、少しボーとしつつ考える。

お、奥さん…?旦那さん…?


彼女達の目には
新婚カップルのようにでも見えたのだろうか?
もしそうなら…少しだけ嬉しいかも…
なんて事を考えつつ
そのまま彼女達からは離れた木の陰から様子を見守る。




恭弥さんは「一枚だけ」と言っていたけれど…
先程の最後の彼女が言っていたように
恭弥さんの両側に二人並んで、残りの1人が写真を撮るようだ。

で、誰が最初に写真を撮る側になるかで、揉めている。

その後は…光の加減が悪かったのだろうか
私から見て真正面ではなく横に移動し…写真を撮る。

次はメンバー交代をして
更に場所を移動し、完全に噴水の後ろに行ったようだ。




私の位置からは
恭弥さんの表情が見えなくなったけれど…
何枚も撮るのを付き合わされて
きっと少し不満顔なんだろうなと想像して
…ちょっと気の毒にもなる。

けれどさっきの…
女の子達の喜びようやハシャギようが可愛らしかったので
遠くから…噴水の方角を
微笑ましい気持ちで眺めていた。






…その時…







……っ!!!……







後ろから、そっと近づいて来たらしい数人の者達に
素早く身体を固定され…
続けて大きな何かで口を塞がれた。



(…っ!!…)


(…こ、この臭いは…吸入麻酔薬だっ…!)



遠くでワイワイしている4人の様子に気を取られていたので
…背後から人が近づいて来ていた事に
私は、全く気が付いていなかった。


気付いた時には…
手術などで使う吸入用の麻酔薬を
ご丁寧に酸素マスクのような容器を口にあてられ
しっかり嗅がされた後だった…



しまったっ!

完全に油断をしていたっ。



まさか…こんな形で狙われるとはっ…!






せめてもの抵抗で、身体を精一杯身動ぎするが…
麻酔が効き始めた身体では
…大した動きが出来なかった。




ゆっくりゆっくりと…意識が遠のいて行く中で…
最後の気力を振り絞り…

少し暴れてみようとした時にどさくさに紛れ
コッソリと…持っていたバックの中に手を入れた。


(…っ…)


そのまま、手探りでスマホの操作をしたが…
…上手く…行って、いる…だろうか…



朦朧とする頭と…
両脇から、拘束された状態では
…確認する事は…出来ない。





……あぁ……


…そろそろ意識を保つのも限界だ…







…最後に…



(…恭弥、さん…。ご、めん…な…さい…)



と、心の中で呟いて…完全に、意識を…


……手放した……











++++++++

++++


++











…ふぅ…やっと解放されたか…


1枚だけだと言った筈なのに…結局何枚も写真を撮らされた…


気が乗らなかったのだか
優衣にあんな顔で懇願されるように言われては…断れない。
全く…僕は思った以上に優衣に甘いな…

そんな事を考えつつ
元々いたベンチまで戻って来たが…




(…?…)



…優衣が…いない…?





不思議に思いつつ、周囲をぐるりと見回すが
…何処にも姿は見えない。


嫌な予感がする。


急いでスマホを取り出して電話をしてみるが
…全く応答なし。


(…くっ!!…やられたっ!!)







スマホの位置情報が使える状態だと良いが…
そう思いつつ哲に電話を掛ける。



「…哲、今直ぐに優衣の居場所を教えて。」



「…恭さん?…どうかされましたか?」



「優衣がいなくなった。」



「…っ!…。直ぐに居場所を調べますっ!!」



「それから…現地調査の専門と、追跡の専門をこっちに寄越して」
「…場所は………。」







必要な事を連絡し終わって、電話を切った後に
改めて周辺に何か残っていないか調べる。

すると…ベンチの少し横の土だけが
酷く乱れている事に気が付く…



視線を低い位置にして…じっと見ると…
優衣の靴の跡以外に、数組の靴の跡があるようだ。

うっすらとだが…男物の靴の跡があるのが分る。
この様子だと、相手は複数のようだ。




そして、優衣が派手に抵抗したような跡が見当たらない。
という事は…
僕達に気が付かれないように
かなり慎重に遠巻きに後をつけて来て…
計画的に優衣を攫った、という事だろうか。


そこまで考えた所で…
ハッとして、先程まで女達が居た噴水の方に視線を向けた。

だが…既にそこには誰も居ない。



(…やられたな…まさか、あんな手で来るとは…)





あの女達は…
僕と優衣を引き離す為の工作員だったのだろう。

僕とした事が、少し油断をしていたようだ。

写真を撮って欲しいと
馴れ馴れしく話掛けて来られた時に…嫌な感じがしたが
こういう事だったか…と解ったが、後の祭りだ。




再び、スマホを取り出す。


「…哲…今すぐに探し出して身柄を拘束して欲しい3人組の女達が居る。」
「それぞれの特徴は………」










それから間もなくして現地の公園に
調査専門の者が道具を持って到着した。

足跡を調べると3人の男の物である事が分った。



また、同時刻の周辺の目撃情報から…
黒塗りの大きなセダンが南方面に走り去った事を確認した。
恐らく、優衣はその車で何処かに連れ去られたのだろう。







一方、スマホに内臓させておいた位置情報は幸いな事に
移動中である事を示すデータを傍受したので
そのまま追跡していたのだが
公園から十数キロ南に走った場所で完全に止まった。

直ぐに現地に赴いてみたが…そこは観光客や旅行者の為の
日本風に表現すれば…
かなり錆びれた“ドライブイン”のような場所だった。






捜索の結果、敷地の端の草むらの中から
一部が欠けて汚れた状態の優衣のスマホが見つかった。

一応、スマホを壊そうと試みたようで…
スマホの表面の強化カラスにヒビが入っている。



だが、このスマホは特殊な素材で作られており
アスファルトや、普通の石を投げつけた程度では壊れない。
大き目の石をスマホにぶつけた後らしい傷も残っていたが
表面のガラス部分が少し欠けただけで
…肝心な本体の内部の部分は壊れていなかった。



僕が行った時は
周囲にも現地にも他には誰も居なかった程の錆びれた場所。
恐らくはココで一旦休憩か何かをしたのだろう。

そして、その時に優衣の持っているスマホに気が付いて
…ココに捨てて行ったのだろう。


何か手掛かりが残っていないか
直ぐに、中身の分析をするように指示を出す。






又、ココではタイヤの跡と目撃情報との結果で
車の車種の特定は出来たのだが…
イタリアではごく普通に良く見掛ける車である為
追うのはなかなか大変そうだ。


それでも一縷の望みを掛け…
追跡班の一部でその道路を南に下りつつ
該当車を探すように指示をした。













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あきゅろす。
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