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虹の彼方 118




草壁さんからの報告を聞いた翌日…
特に予定も無い日だったので
気分転換も兼ねて恭弥さんと街を歩く事にした。

一緒に食事をした後は
取り留めもない会話をしつつ、ゆっくりと歩く。




恭弥さんの態度は優しい紳士で
まるで本当にデートをしているような雰囲気だ。
食事の時も、歩いている時も
…とても私の事を気遣ってくれる。

その事に嬉しくなりつつ
結構大きな広場のある公園内に足を踏み入れた。





とても大きな広々とした公園内には真ん中に噴水があり
その周りが広場になっている。

更にその周囲には、所々に大きな木があり
…とてもゆったりとした園内だ。

広くて大きな公園だが、人はあまり多くない。
離れた木の陰に恋人らしい人達が数組と
子供連れのママ達が遠くに数組。





木の陰になる場所のベンチが空いていたので
二人でそこに座った。

欧州出発前に山の斜面にある遊歩道のベンチに
一緒に座った時は…
人2人分が空いている…微妙な座り方をしたけれど
今では、隣に座るのが当たり前になった。

隣に座るだけならば
…特に恥ずかしいとも思わなくなった。



いえ、寧ろ…
こうして隣に恭弥さんが居てくれる事に…安心感を覚える。

あの初めてのドライブから約3か月経った事になる…
恭弥さんと居るだけで
ドキドキして緊張の極致だった頃から考えると
…私は随分と変わったものだ。








そんな事を考えていると…隣の恭弥さんが…
あの美しい光を帯びた瞳で私の事を、じっと見て来た。
…そして…少し真面目な口調で…



「…優衣…今までワザワザ言うまでも無いと思って口にしなかったが…」
「万が一、何か…君に危険が及ぶような事があっても、僕が必ず助けに行く。」




「…はい。ニックの時も恭弥さんは颯爽と助けに来て下さいました。」
「自分でも危険な事に巻き込まれないように、十分に注意をするつもりですが…」
「万が一の時は、恭弥さんが来て下さると信じています。」




「何があろうとも決して諦めないで…僕を待つと約束してくれるかい?」
「絶対に…自分の命を粗末にしないと誓って欲しい。」
「どんな事をしても…生き延びると誓って欲しい。」




…急にどうしたのだろう?
恭弥さんの台詞にしては…少し違和感がある。

でも、取り敢えずココは返事をしないと。




「…はい…解りました。」
「何があろうとも絶対に…恭弥さんの助けを信じて待ちます。」
「途中で諦めたりしませんし…何とか生き延びる方法を探ります。」




キッパリと言った私の返答を聞いた恭弥さんが…
穏やかな笑みを浮かべ嬉しそうにする。

草壁さんから聞いたポルポ・ファミリーの動きを
とても気にしていたようだし…
私の事が心配になったのだろうか。


ほんの少し前に…
英国でニックに半誘拐された“実績”があるんだし
心配にもなって当然かもしれないな。





「恭弥さんは、約束を守って下さる方です。」
「私は…恭弥さんを信じています。」


再度…ハッキリとした口調で言った。



…すると…



「…うん…。じゃあ…お互いに約束を守るという…誓いのキス。」



(…ぇ?…)



(…っ!!…)



…気が付いたら…素早く肩を抱かれ…
とても優しく唇が重なっていた。

ちゅっと軽くキスをして、ゆっくりと離れた恭弥さんが
…悪戯っ子のような顔をして、私の顔を見る。




ゆ、油断していたっ!

最近は、額へのキス以外はされていなかったし
…完全に不意打ちだった。


…だ、だめだ…
顔が赤くなるのを抑える事が出来ない…。




私が恭弥さんに恋をしてしまっている事を自覚してからは
…先日の…泣いてしまった時以来だろうか。

でもあの時は…何と言うか情緒不安定な感じだったので
…変に反応はしなかった。
というか反応する心の余裕がなかった…。




でも…今は違う。

恋を自覚していなかった時よりも
…自覚の出来た今の方が何十倍も恥ずかしいっ!!




カッーーと一気に
茹蛸のように真っ赤になった私を見て
恭弥さんがクスクス笑う。



「…凄いね。良く熟れたトマトのようだ。」




ついさっきの食事の時の
お料理の中にあったトマトを思い出す。

心の中で…あ、あんなに赤くなんて…ない筈っ!
と思いつつも…言葉には出せないでいた。



そのまま…暫く恭弥さんにからかわれて遊ばれて
嬉しくも恥ずかしくも思いつつ

一緒に…穏やかな時間を過ごした。












暫くそうして、のんびりと過ごしていたのだが…
先程から…何やら視線を感じる。

そう思って視線の方を見ると…
イタリア人の若い女の子3人が私達の方をチラチラと見ている。
3人で何かを話しては
…私達の方をチラリと見るのだが…



この視線の先は…
どうやら恭弥さんに注がれているらしい。

時々キャッキャッと言っては
少し顔を赤くしている所を見ると…
『カッコイイ〜!』とでも言っているようだ。



まぁ…気持ちは分らないでもない。

恭弥さんは『実はモデルです』
…と言っても良い様な容姿をしているしね。

先日の2回のパーティの時だって…
凄く多くの女性の視線が集まっていた。
日本、ドイツ、英国、イタリア…どこの国に行ってもモテるって凄い。



欧米では、どちらかというと
見た目に筋肉があるタイプの人…
ある程度体格の良い人がモテる傾向があるけれど
恭弥さんは、それには当て嵌まらない。

なのにモテるという事は…細見の体格であっても素敵!
と思わせるスペックの高さがあるからだろうな。








そんな事を考えていたら…
その女の子達が、ゆっくりと近寄って来た。

恭弥さんは、視線には気が付いていたみたいだけど
…ずっと無視をしていた。



けれど、ゆっくり歩いてとうとう
目の前に3人の女の子に並ばれてしまい…
仕方なく、その子達に視線を向ける。

すると…その子達が、おずおずと話し掛けて来た。



「…あの…もしかして、日本人ですか?」



「…はい。私達は日本から来ました。」

そう答えてあげると…。




「あぁ、やっぱり!」
「私達は…大学で日本の文化やアニメなどを勉強しています。」

「日本が大好きなんです!」

「でも、この街では滅多に日本人には会えないので…お逢い出来て嬉しいです。」

「何時か、絶対に日本に行きたいと思っています。」

「日本の文化は最高にクールですよね!」




次々に、少し興奮したように話す彼女達を
微笑ましい気持ちで見ていたら…




「…あの、それで…お願いがあるのですが…」



「…?…」



「一緒に…写真を撮りたいのです!どうかお願いします!」



と…3人で一斉に…
恭弥さんに向かって熱い視線を向ける。



「…………。」


やっぱり…彼女達の目的は恭弥さんみたい。
…私は必要ないみたいね…と少し苦笑しつつ思う。

言われた恭弥さんは…
少しムスとしていて何も答えない。









彼女達が不安そうな顔で見ているのが可哀相になり
…日本語で恭弥さんに声を掛けた。



「あの、恭弥さん…写真…一緒に撮ってあげたらどうでしょうか?」



「…どうして僕が。」



「日本人が珍しいみたいですし…」
「きっと恭弥さんが恰好良いから、写真を一緒に撮りたいのだと思います。」



「そんなの僕には関係ないね。」



「写真の一枚や二枚…撮ってあげても良いと思うのですが。」








少し哀しそうに言うと
…私の方をチラリと見る恭弥さん。

そして、目の前で不安そうな顔をしている女の子達を
…チラリと見て…



「…仕方ないな。」


そう言いつつ立ち上がり…イタリア語で、彼女達に…



「一枚だけだよ。」

と少々ぶっきらぼうに言う。




それを聞いた女の子達はキャッー!!
…と大喜びだった。













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