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虹の彼方 108





そうだ、そう言えば…
先日のディーノさんとの話は、何だったのだろう?
この際だ、思い切って尋ねてみる事にしよう。



「先日、街で偶然にディーノさんに逢った時に…」
「私との婚姻話を…リボーンに持ち掛けられたと聞きました。」
「それも…私をツナの義妹にして嫁がせる、と。一体、どういう事ですか?」



そう尋ねると
少し面倒そうに答えるリボーン。





「あれは…ひとつの案、だ。」
「ヘタレ野郎が、自分で嫁さんも見つけられねーみたいだからな。」
「イザという時には、そんな案もある…という程度だ。」



「…そうなんですか?でも、ディーノさんの言い方は少し違いましたが。」



「勝手に、てめぇに都合よく解釈したんだろ。」



(…………。)



そんな風には見えなかったんだけどな。
でも、こうキッパリと言われると更に突っ込む事も出来ない。
もう少し他の面から言ってみよう。







「あの…では、私をツナの義妹にする…というお話は?」




「それも、もしもの時の話だ。」
「もしも、お前を何処かのマフィアのボス・クラスに嫁がせるような時は…そんな手もある、って事だ。」
「それによって、ボンゴレとの同盟も強固になるだけでなく…優衣、お前自身にも箔が付く。」
「そうすりゃ、相手もお前を大事にせざるを得ないだろーしな。色々と都合がいーだろ。」




「…ボンゴレと…私の為、なのですか?」




「この場合、メインはお前の為だ。ボンゴレの為というのは…オマケみてぇなもんだ。」




「…………。」




リボーンがボンゴレの事を
“オマケ扱い”するなんて…凄く驚いた。

今まで、そんな台詞は一度も聞いた事がない。










リボーンの真意が…大真面目に、本気で全く解らない。
こうやって一緒にダンスを踊り、直ぐ近くにいて会話をしているのに
…表情からも態度からも、何も読み取らせてくれない。

何時もの事、といえばそうだけど…
でも、今日は何時もと違う雰囲気のリボーンに不安になる。



「…そんなに警戒するな。」
「本音は、今すぐお前を掻っ攫って行きてー所だが…どうやら、そうさせてくれねーみたいだしな。」



そう話しをしつつ
視線だけでチラリと恭弥さんの方を見遣るリボーン。



ダンスを続けつつ、私も恭弥さんの方を見ると…
超絶ムスッ!とした
不機嫌オーラを全開にしてリボーンを睨み付けている姿が見えた。

離れた場所だし…まさか…
今までの『風紀財団の仕事を降りてボンゴレに帰れ』という会話が
耳に入った訳ではないと思うけれど…
まるで、私とリボーンの会話内容が解っていて超絶不機嫌なように見えた。





貿易商としての恭弥さんは
もの凄く愛想が良い訳ではないけれど
でも基本的には、傍目にハッキリ解る程の不機嫌顔は見せない。

その辺りの事は、完璧に演技して来た恭弥さんなのに
…今は、あまり不機嫌を隠していない。


リボーンに向けている殺気レベルのオーラは
余程敏感な人でないと解らないだろうと思うけれど…
でも、良く見れば不機嫌である事なら解るレベルだ。








…何だか…
このままリボーンとダンスを踊るのは不味いような気がする。
かと言って、今、ココでダンスを
突然止めてしまう事もさせてくれそうにない。

リボーンが、一体何を考えて
私を口説こうとしているのか、全く解らないけれど
何とかしないといけない気がする。




そう考えて、少しボンヤリしていたら
…耳元で低く甘い声が響いた



「…優衣…Amore mio…」(マイ・ラブ)
「…stellina…」(オレの可愛い星)





(…!っ…)



イタリア語で、恋人に甘い言葉を囁く時の定番のような単語を
サラリと言って来るリボーン。

こんな台詞を、低音の美声で囁かれたら
女の子はたまったものじゃない。

な、流されないようにしないと!




きっとリボーンは
久しぶりに逢った私をからかって遊んでいるのに違いない…

…うん、きっと…そうだろう。

というか、それ以外に
…こんな事をする理由が見当たらない。







そう思っていると…


「全く…お前の鈍感さは折り紙つきだな。」


と少々、溜息混じりに言われる。





「これじゃあ、ヒバリも大変だろーな。」


と続けて…チラリと恭弥さんの方を見て



「そろそろ我慢の限界のようだな。」
「…まだ、本当は足りてねーけどな…仕方ねぇな。」


とブツブツ言うリボーンの真意が解らず
私の頭の中はずっと…??だった。







その直後に
ダンスが終わり、会場がざわざわし出したと同時に
…気が付いたら…リボーンと私の目の前に恭弥さんが居た。

(…!…)

一体何時の間に?…凄く素早い、よね…
そう驚いていると…




…低く冷たい怒気の籠った声で…


「…どういうつもり。」


と、リボーンを睨み付ける。







リボーンは恭弥さんの殺気混じりの視線にも
全く動じずに鼻でフンと少し笑い。

会場を少し見回して、視線をディーノさんの方に向け
手でチョイチョイと傍に呼びつけて…


私達の傍に来たディーノさんに向かって


「…優衣の相手を暫く頼むぞ。」

とイキナリ声を掛ける。






私もディーノさんも驚いて…


「「…え…?」」


と、同時に声が出たが、そんなのお構いなしのリボーン。




戸惑っていると、恭弥さんも…


「…跳ね馬…少しの間、優衣を頼むよ。」


と同じ事を言い…
訳が解らずに、あっけに取られている私とディーノさんを残し

リボーンと恭弥さんは…互いに無言のまま…
バルコニーから庭の方へと…消えた。









「…………。」


「…………。」



その様子を、黙ったままディーノさんと二人で見送りつつ
…色々な事が頭に浮かぶ。





『今回の仕事の間は…』
『ボンゴレの人間とも、ディーノさんとも関わってはいけない筈ではないの?』

…とか。

『こんな大勢の人の居る所で…目立ち過ぎです、お二人さん』

…とか。


『この地域では一番大手のマフィアのボスであるディーノさんを呼び付けて…』
『挙句に、一時(いっとき)の私の用心棒に使うなんて…!』

…とか。








色々な事が頭の中をぐるぐると周る。

暫く、そのまま茫然と立っていたのだけど
ディーノさんが隣から優しく声を掛けてくれた。




「…優衣、取り敢えず…向こうで少し休もーぜ。」



「…え?…あ、はい。」



促されるまま、ディーノさんの部下が確保してくれた席に座り
…ドリンクで軽く喉を潤し、深く息をついた。














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あきゅろす。
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