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虹の彼方 107




再び、本会場内に足を踏み入れ…
元々いた、人の出入りのチェックのし易い場所に
行こうと足を進めていたが、
大勢の人がいるので、会場の中心にやや近い場所で
足が止まってしまった。



少し前にダンスが終わったばかりのようで、
少し会場がざわざわして、多くの人が移動している。

強引に進む訳にも行かないし、
仕方がないので、その場で暫く人の移動を待つ事にした。




…と…



ふいに、1人の男性が私の目の前に現れ…
恭しく優雅な仕草で手を差し伸べつつ

低く綺麗な発音のイタリア語で…



「お嬢さん、一緒に踊って頂けませんか?」



と話し掛けられ…相手を確認して…
驚いて、どう返して良いか解らず無言になってしまった。




だって、その相手は…

………リボーンだったから。




「…………。」



こんなに人目の多い場所なのだし
同じパーティに居ても声を掛ける所か
近くに寄る事すらやめた方が良いだろう…
と思っていたのに。


それにリボーンは…
私達がボンゴレと関わりがある者だと思われるのは
困る…と知っている筈なのに…何故?










返事を返せないまま、チラリと隣の恭弥さんを見ると…

あぁ…やっぱり…
もの凄いご機嫌斜めオーラが出ている。

いや、これは…機嫌が悪いというレベルではない
…最早、殺気というレベルだ。



先日、ディーノさんに偶然出逢った時の
機嫌の悪さなどより、何十倍も不機嫌そうだ。

う〜ん…。
どうするべきだろうか。



断ってさっさと移動するべきだろうか?

でも恭弥さんは、リボーンに鋭い視線を向けてはいるが
この場を離れようとはしていない。

もしかして、わざわざリボーンがダンスに誘って来たという事は
何か理由があるのかもしれない。

ダンスに託けて
何かを伝えようとしているのかもしれない。







…と迷っている間に
次のダンス曲がゆっくりと流れ出して
それに合わせて、ダンスをする人々がゆっくりと
ホールの中心に向かい移動する。

急いで、この場を離れなければ…


…と思っていたら…


(…!!っ…)


次の瞬間…素早く私の手を捉え、手を引かれ
あっと言う間に、人の隙間を優雅にスルリと通り抜け…

何時の間にかホールの中央付近に移動して行き


…気が付いたら…


目の前にはリボーンが僅かに微笑みつつ私を見ていて…
無言のまま軽く手で合図をされ
促されるまま…一緒にダンスを踊っていた。







驚いたけれど…今のは、なんてスマートで
…無駄のない素早い行動だろう。

恭弥さんも、こんな事には、相当に長けているけれど…
リボーンの方は、如何にも手馴れている感じがする。


それに…
当然のようにダンスのリードも、とても上手だ。
恭弥さんと甲乙つけ難いレベルの上手さと踊り易さ。

流石…リボーンだな、と素直に思う。





にしても…
こんなにホールの真ん中に近い所では、妙に目立ってしまう。

そうでなくともリボーンは、妙な存在感があり目立つ。


決して派手な訳ではないのに…遠目でも目を惹くのだ。
近くで見ると更に、目を惹きつけられる。

それにダンディな大人な雰囲気の中から
醸し出される色気は半端ない。

その仕草にも、言葉にも、声にも…
そして視線にすら優雅な色気が宿っているように感じる程だ。


昔も今も、リボーンに近づいて来る女性が
後を絶たないと聞いた事があるが
そうだろうな…と納得した事が何度もある。




そんなリボーンとダンスなどをすれば
当然、目立ってしまう。

今日は大勢の参加者に紛れて…
あまり目立ち過ぎないようにしたかったのに。
だからこそ、着物も止めたのだし。


それに、お子様に見えてしまい
逆に目立つかもしれない何時ものドレスも止めて
そこそこ大人に見えて
周囲の素敵なレディー達の間でもあまり目立たないであろう
この深い真紅色のドレスにしたつもりなのに。








折角、あんなに迷って決めたドレスなのに
…これではあまり意味が無かったな…
と思っていたら。

リボーンが、小さく声を抑えて…
でも低く艶のある日本語で話し掛けて来た。



「お前にしては、随分と大人っぽいデザインのドレスだな。」



「…見た目がお子様なので…少しでも年相応に見えるように、頑張ってみました。」



日本語なので
周囲に聞こえてもあまり支障は無いと思うけれど
もしかしたら日本語の解る人がいるかもしれないし
私も声を小さくして囁くように返事をする。









「少し意外に思ったが…こんなドレスも案外、似合うじゃねぇか。」



「有難うございます。…恭弥さんにも同じ事を言われました。」



「ヒバリの趣味で、そのドレスを着せられた訳じゃねーのか?」



「いえ、ドレスは…私の判断で選んでいます。」



「…そうか。つまり、こんな色っぽいデザインのドレスを選びたくなるよーな、」
「…心境の変化があったって事か。」



「…え?…」



リボーンの言葉に驚いて
思わずリボーンの顔を見上げる。


するとニヤリとした、何とも言えない笑顔で…

「…違うのか?」

と更に問われる。








「…………。」


…私の心境の変化があった事で…
それで、今までと違うドレスを選びたくなった…の?

そんな事、考えた事も無かった。
けれど…目の前のリボーンの表情は確信に満ちている。



良く解らないし、自覚もないけれど…
考えられるのは先日のアレックス夫人との会話。

私が恭弥さんに恋をしてしまっている事を
…自覚した日の事。

でも…正直、それが原因なのかどうか良く解らない。




「…分かりません。」


小さな声でポソリと答えた。










私の答えを聞いて、ふっと少し笑って
…今までより、少し身体を引き寄せられたかと思うと

私の耳元に唇を寄せて、低く甘い甘い声で…




「少しの間に随分と…イイ女になったな。」
「…どうだ…、そろそろオレの女にならねぇか?」




(…!!…)



突然、何を言い出すのだろうか…!


あまりに驚いて目を真ん丸にしてしまった私の顔を見て
リボーンが如何にも可笑しそうにクックッと笑う。



「そんなに驚く事か?」



「こんな所で、そんな冗談は…止めて下さい。」



笑っているリボーンに少々ムッとしながら答えると…
真面目な低い声で…





「冗談なんかじゃねぇ。お前が磨けば光る珠なのは最初から感じていた。」
「オレの手で、じっくり磨いてやるつもりだったのに…途中で…ヒバリに攫われちまった。」
「そろそろヒバリとの仕事は終わりにしてオレの元に戻って来い。」






「…………。」


リボーンは一体、何を言っているのだろうか?

真剣に訳が解らない。




今の仕事を急に降りるなんて…そんな事、出来る筈がない。

もしも、そんな事をすれば
ボンゴレにも風紀財団にも多大な迷惑を掛けるだけでなく
きっと物凄いトラブルに発展する事、間違い無しだろう。


風紀財団とトラブルを起したら…
いくらボンゴレと言えども
今後、色々と困る事になるのは目に見えている。


リボーンに、そんな事が解らない筈もないのに…
一体、どうしたのだろうか。










+++++++++++++++++++++++++++++++



※注釈※

お読み頂ければ解ると思いますが…
当然ながら“大人リボーン”です。

年齢不詳なダンディで男前でスラリと格好良い
イイ男のリボーンをイメージして下さいね。
















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あきゅろす。
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