大空に抱かれて 11 今の優子の態度もそうだった… 僕の本音である『早く帰宅して欲しかった』という気持ちを隠し… 如何にも問題なんてなかったように言ったのに対して、 彼女のほうが…『私が寂しくなるから』と譲った。 ここで「本当は、早く帰って欲しかったのでしょう?」 と…追及して言わずに… 全て、自分の方の気持ちの問題であるかのように… 『譲って・柔軟に・優しい』対応をしてくれた。 お蔭で僕は、本音である 「本当は大変だった。早く帰って欲しいと切望していた。」 という弱音を、無理矢理に言わされる事なく… 僕の小さな小さなプライドは保たれた…という訳だ。 そして、彼女の凄い所は… 「それを計算でなく自然体でやっている」という所だ。 小賢しい知恵で、計算の上… そのような行動を取る女性もいるが、優子の場合は違う。 ごくごく普通に、 本当に自然に…本音で、そう思って言葉を発し行動する。 だからと言って、何も気が付いていな訳でもなく…全て解っている。 …要するに彼女は… 僕の本音に気が付いても「微笑んでスルーできる」程に大人であり 母のような優しさ=何もかも(欠点と思える事までも)を… 全て、包み込んで許せる度量…があるのだろう。 優しく包み込む度量があるからこそ、 僕の小さなプライドを、傷つけない言動を… さり気無く自然に取れるのだろう。 …成程… 警戒心の強い、この僕が… 優子の傍だと、心の底からリラックスし寛げる理由が解った気がする。 つまり…優子は、僕を決して“裁かない”のだ。 僕の全て(疲れも弱音も、苛立ちさえも)を受け入れ… 優しく穏やかに…抱擁する。 裁いたり責めたりする気持ちの強い者の傍で、 ゆったりと寛ぐ事など出来ない。 優子から感じるのは、その真逆の感情… つまり…僕を癒し慰めたい気持ち、そして感謝の気持ち… そんな、大らかで優しい包み込む感情だ。 心から…嬉しそうに楽しそうに、 夕飯を作っている優子の姿を見ながら… “母性”…と言われる物の真骨頂が… 優子の姿を通して…垣間、見えた気がした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |