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帰港地 24




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今…私は、幸せを噛み締めつつ、

雲雀さんの運転する車で、実家に向かっている。




久しぶりに会う両親は…驚くだろうか。





喜んで、くれるだろうか?

…それとも、もしかしたら…また怒られるだろうか?




…どんな反応であっても、今回は、絶対に引き下がらないし逃げない。

じっくり根気よく…両親と話しをし、ちゃんと認めて貰おう。





こんな私に、教育をつけてくれ、社会に出て恥ずかしくない大人になれるよう
厳しく躾けてくれた事への感謝を伝えたい。

両親の躾けと教育のお陰で…礼儀作法に煩い雲雀さんの元でも
それ程困る事はなかった…。



社会に出て、就職する事はなかったけれど…
雲雀さんや草壁さんからは、今の私で…充分に社会に通用する、と太鼓判も頂いている。

これらは全て…私を慈しみ愛し、育ててくれた…実家の両親のお陰。






雲雀さんも…その辺りの事は、ちゃんと分っているので…
今まで、私に向かって実家の両親の悪口を言われた事など一度もないし、
逆に…
『真理子の実家は、思った以上にしっかりした家庭のようだね。』
と…何気に褒められた事もある。




そんな…大恩がある…私の大好きな両親にも…
ちゃんと結婚式に出席して貰って、
…私の花嫁姿を…しっかりと見て欲しいと思う。


二人でいる事が、
私にとって、どんなに幸せなのか…それを感じられる結婚式にしたいと思う。






そして―――、
…両親にも、心から祝福して貰える門出にしたい…。

それが娘としての、親孝行のひとつでもあると…そう思えるから。













やがて…車が静かに停止した。



「…着いたよ。1人で行くかい?それとも一緒に行く?」


「一緒に行って頂いても…良いですか?」




「良いのかい?」
「…僕の姿を見たら、話をする前に、塩を撒かれるかもしれないよ?」


「…塩なんて…そんな。」
「…大丈夫です、きっと。そんな気がします。」



「(クス)鈍感な君の勘なんて、全くあてにならないけど…。」
「…でも、君がそう言うなら二人で行こう。」


「はい。…お願いします。」





優しい口調で、
そう言ってくれた雲雀さんに、私も笑顔になる。





少し…車の中で見つめ合い、アイコンタクトで
…語り合う。



『(…心の準備は…出来た?)』 


『(…はいっ!)』   


…コクンと頷き、車のドアを静かに開けた。







+++++++







二人揃って、実家の玄関の前に立つ。




軽く深呼吸をし…

少し震える手で…インターホンをゆっくりと鳴らした…。







インターホン越しに聞こえた、懐かしい母の声。
 
モニター画面に映る私達を見て、少し慌てた声がする。








暫くして、



……静かに……玄関の扉が開かれた……。










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あきゅろす。
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