帰港地 18 そして、暫く無言で見つめ合って… ゆっくりと、優しい手つきで…雲雀さんの手が、私の頬に触れた。 そのまま、右手をそっと軽く頬に添えたまま …ゆっくりと口を開く。 「僕は、真理子が居ないと…色々とダメなんだ。」 「今回、君が出て行った後…なかなか見つからない間、それを噛み締めていたよ。」 「電話しても出ないし、探させても見つからないし…イライラするし不安にもなるしで…酷いモノだ。」 ちょっと苦笑しつつ言う、彼の台詞に驚いた。 「…私を、探していたのですか?」 「当たり前だろう。」 「既に夜だったし、君は着の身着のままだし。…心配して普通だろう。」 「心配してくれていたのですか?あの…怒ってるだろうと思っていました。」 「無論、怒ってたさ。言いたい放題言って、僕の話しも聞かずに飛び出したんだからね。」 「…だけど、真理子の寂しい気持ちに、もっと寄り添ってやれば良かったとも、思ったんだ。」 「寂しい想いや不安な気持ちにさせて…悪かったね。」 「真理子は鈍感過ぎるんだし、もう少し言葉に出して言ってあげるべきだったかな。…余計な心配は要らない、って。」 「僕は真理子を大切に想っているって…言ってあげれば良かったね。」 「…雲雀、さん…」 「…愛しているよ。真理子の居ない僕の未来なんて、…要らない。」 「この先の人生も、…僕と一緒に歩んでくれるかい?」 もう、今の言葉で …私の涙腺は完全に崩壊した… しっかりと雲雀さんの顔を見たいのに …涙で歪んでしまい、ちゃんと見えない…。 …感動で、心が震える…。 でも… ここまでちゃんとしたプロポーズの言葉を言って貰ったのだし、 しっかり…お返事しない、と…。 頑張って、少し震える声で何とか答えた。 「…はい。あの、私は鈍いし気も利かないし…大した事は出来ない不束者ですが…」 「でも、私の存在が…少しでも貴方のお役に立つのでしたら…どうかお傍に置いて下さい。」 「どうぞ…末長く、宜しくお願い致します。」 「…うん。…有難う。僕のほうこそ…宜しく。」 その後は… 気が付いたら、私は雲雀さんに抱き着いてワンワン…泣いていた。 真夜中の神社に…私の泣く声だけが…響いている。 今まで一度もちゃんと聞いた事のない…雲雀さんの気持ちを聞けて… 嬉しくて、有り難くって… 感動の涙と、喜びの涙が溢れて、 …何時までも、泣き続ける私に対して、 何時ものように「煩い」とか「くだらないね」などとは言わずに… …ずっと… そっと優しく抱き締めてくれていた事が、更に私の涙を誘ったのだけど… でも、きっと… こんな事も、一生に一度の事だろうし… 偶には良いよね? …と、甘える事にした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |