帰港地 16
「…良い加減に…察したら?」
「疲れた僕が癒しを求めて、真理子の所に帰って来るんだ…帰港地(きこうち)にね。」
「君は、僕が帰宅した時に備えて…自分の好きな事をしながら…ただ待っていれば良い。」
「…ただ、待っているだけ?」
「そうさ。…但し、僕の事を考えながらね。」
「……それは、何時もそうでしたが。」
「知ってるよ。だから真理子には仕事をさせていないんだ。」
「…僕の事だけを考えられるように、ね。」
「え?…そうだったのですか?」
「仕事をさせたら…仕事中は仕事の事だけになるだろう?僕は、そんなの我慢出来ない性質でね。」
「真理子には…僕の事だけ考えて、想っていて貰いたいんだよ。」
そう言いつつ、今度はとても優しい表情で二コリとされて…
久々に見た彼の笑顔に、顔が赤くなっていった…。
私は昔から…
滅多に見れない彼の笑顔に、もの凄く弱い。
多少ゴタゴタや不満があっても…
そんなモノは、全てどうでも良く思えてしまう程…
雲雀さんの、レア過ぎる優しい笑顔は…色々と効果抜群だ。
火照った顔を…夜風が優しく撫でてくれる…
昼間よりは暗い…
優しい月明かりの下である事が、有り難い…
こんなに真っ赤になった顔を、白昼の下で見られるのは、
やっぱり恥ずかしいし…ね。
(でも、明るめの月光だし、きっと雲雀さんにはバレバレだろうけど…)
真っ赤な顔を、何とか冷やそうと…必死になっている私に
雲雀さんが、続けて声を掛ける…
「…と、いう事だからね。改めて…この先もずっと、僕と一緒に居てくれるかい?」
「…はい。あの…宜しくお願いします。」
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