[携帯モード] [URL送信]
帰港地 15




真夜中の…並盛神社の境内で、向かい合って話をしている私達を
美しい月が、穏やかに照らしていて…
明るい光のお陰で、お互いの表情もハッキリと見える。



月光に照らされた、雲雀さんの顔が…綺麗だな…
何時も思うけど…涼しげな表情なのに、何処か色香を感じる。

(男のクセに、女の私より妖艶なんてズルイよね…)
(というか、私の立場が無いのですが…)






つい、…見惚れていたら、
ジッと…私の方を見ていた雲雀さんが
少し真面目で、でも穏やかな表情で話し出した…。



「さっきも一度言ったけどね。もう、二度と…僕の許可なく、勝手に傍を離れる事は許さないよ。」
「まぁ、許可なんて…、一生出さないけどね。」



「…え…。それって…もう一人でお買い物にも行けないって事ですか?」



「は?…何を言ってるのさ。そんな意味じゃないよ。本当に…どうして君は、そう…」






仕方ないな、という顔をして
苦笑しつつ…


「“傍を離れるな”というのは…物理的な距離の事じゃないよ。」  
「そんな事を言ったら、毎回、仕事に真理子を連れて行く事になるじゃないか。」
「そうではなく…精神的に、心、気持ちにおいて、という意味だよ。」

「でも、そうだな…座敷牢に閉じ込めて外に出られないようにするのも…良いかもね?」





とても黒い笑みで言われて、慌てる…


「い、いえ…それは…ご遠慮したいのですがっ!」


座敷牢なんて、冗談じゃないっ!!  
(…彼の場合、本当にやりかねないし…(汗))

慌てて…全力で否定した。








「(ふっ)冗談だよ…そんな事をする筈がないだろう?」
「最も、今日のように逃げ出そうとしたら…保障しないけど。」



「…もう、勝手に飛び出したりしません…。」



一応、しおらしく言ってみる。
ここは、大人しく素直な態度でいるのが一番だろう…。






「うん。それで良い。…そうやって、何時でも僕が“帰る港(みなと)”を提供しててよ。」
「…意味は解るかい?」





「“帰る港”の意味ですか?……解りません。」




港って、船が停まっている場所の事よね? 

…何が言いたいのだろう?
彼の表現って…私には分かり難い…。


もっと…万人に分かる言い方で説明してくれないかな…。
(それとも、解らないのは…私だけなの?)













[*前へ][次へ#]

15/29ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!