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帰港地 14




「真理子は、世界に只ひとり、“この僕を癒す事が出来るスキル”の持ち主だ。」
「…そんな君が、僕の傍から居なくなると、…僕が困る。」



「……えっ……」


雲雀さん、…突然…何を言い出したんだろう…。

かつて一度も聞いた事がない言葉に唖然とする…。






「だから…僕の許可なく勝手に出て行く事なんて、許さないよ。」



「…………。」




「何も考えていないのかと思っていた君が…あんなにも、色々な不満を持っていたのには驚いよ。」
「でもハッキリ言って、どれも大した内容じゃないよね。」
「真理子が、僕の元から出て行く程の理由になる物は…無い。」




「…そんな言い方は酷いです…私には重要な事なんです。」



「君、…本当にズレてるね。この話の流れで…その返答?」
「誰よりも僕の傍にいたクセに…何も解って無かったのかい?」



「…何のお話ですか?」




「……(溜め息)……。」
「だから…さっきから言ってるだろう。…僕には、真理子が必要だって。」




「…は?…え?…そんなお話、出ましたか?」




「全く、これだから君は。」
「…全てを言葉に出して言わないと…解からないとでも言うのかい?」




「…はい、…解りません…」




軽く頭を振りながら、
今までになく大きな溜め息をついた彼は…

本当に仕方なさそうな顔で…口を開いた。




「じゃあ、言ってあげるよ。」
「鈍過ぎる真理子にも“解る言葉”で、特別丁寧にね。」




わざわざ妙に、後半を強調した話し方をし…

ふと、真面目な表情になったかと思うと…
少しだけ、ほんの少しだけ微笑しつつ…




「自分で好き好んで、ではあるけどね…厳しい世界に身を置いている僕には、“癒し”は絶対に必要なんだ。」
「で、僕に癒しを与えられるのは、世界中で真理子ひとりだけだ。」
「…他に代わりになる者は居ない。」
「つまり、君が居ないと…僕には癒しがなくなるって事だよ。」

「もしも真理子が居ないと…外でイライラした気持ちを溜めこんで、それが癒されずに貯蓄されて行き…。」
「…きっと…僕の周りにいる者達は、常に怯えていないといけなくなる、…だろうな。」



二ヤリと、とっても意地悪そうな黒い笑みで、
サラリと怖い事を言う雲雀さん…






「そ、それは…避けたい状況ですね…」



「…だろう?哲辺りが…一番最初に犠牲になるかな。それとも、あの草食動物達のほうかな。」



「や、それは…止めてあげて欲しいのですが…。」



草壁さんには、何時も多大なお世話になっているしっ!!
草食動物って、
…きっと、沢田君や獄寺君や笹川君達の事…だよね。
彼らにも、色々とお世話になってる…。





「だから…それを防ぐ為には、真理子が僕の傍にいる事が必要なんだ。」
「…さっきから言ってる通りだよ。」



「…………。」




そんな事を、急に言われても反応に困る。

今まで、一度だって、そんな事を言ってくれた事…ないのだし。

どう返事をして良いかも解からないし…
色々と“納得出来ない感”が、残っている…。






黙り込んでしまった私を見て…


「君、思っていたより強情だね。それに…欲張りだな、まだこれ以上言わせる気?」




…強情や欲張りって…そんなつもりはないけど。

でも、今回は何となく、スグには素直になれなくって、
…やっぱり黙ったままだった。






少し俯いて…
黙り込んだままの私を見た雲雀さんは…



「まぁ、全てを言葉で聞かないと、理解出来な真理子だから…仕方ないか。」
「良い機会だし、言ってあげるよ。…最後まで、ね。」












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