母親な彼女 8 恐らく優子から、 真衣の部屋に入らないよう、又は近づかないように… と言われているのだろう… 心配だが、部屋に入る訳にも行かず、 ドアの前で様子を伺っていたのだろう。 「心配ないよ。…君達は、もう寝なよ。」 「…でもっ!…」 政紀が心配顔で、 …このままでは心配で眠れない!と眼で訴えて来る。 全く、…仕方ないな…。 「…僕が中の様子を見て来るから、君達はココに居なよ。」 そう話すとコクンと頷く長男の政紀。 次男の拓弥は、ジッと僕の眼を見ている (いや、睨んでいるという感じか)…。 …何? …僕が信用できないとでも? …そう思い、少しムッとしたが… 無視して、 静かに長女の部屋の中に入った。 仄かな灯りの、薄暗い室内には、 寝息を立てて静かに寝ている真衣…と、 その傍らでそれを見守る優子の姿。 僕が入室して来た事に気が付いて、声が掛かる… 「…恭弥さん?…お帰りなさい。お疲れ様でした。」 相変わらずの言葉…、 でも本当に疲れているのは、君のほうだろう? 「…ただいま。…真衣の具合はどう?」 「夕方から何とか熱も下がりましたし、少しだけ食事も出来ました…」 「…明日の朝には、だいぶ回復していると思います。」 そう穏やかな笑顔で話す彼女。 「そう、それは良かった。…君もお疲れ様。」 「今夜は僕が真衣を見てるから、君はひとりで、ゆっくり寝て。」 「…え?…恭弥さんが付いてて下さるのですか?」 「…何?僕がついてるんじゃ不安かい?」 「いえ…あの、でも…私は大丈夫ですよ?」 「君が休んでくれないと…僕も、…それに子供達も心配なんだよ。」 「…え?」 「ドアの外で2人…、この部屋の様子を伺っていたよ。」 そう話すと、少し驚いた顔をしつつ、 状況を把握したらしい彼女は… 「………。…そうでしたか、有難うございます。」 少しはにかんだ笑顔で、そう言った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |