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時を重ねて 9




二人並んで、ゆっくり歩いて駐車場まで戻り、
再び車に乗り込み、夜中の穏やかな海岸を後にした…




途中、高速のサービスエリアに休憩の為に寄った時に、
『夜中の高速を、運転してみたいから』
と…半ば強引に言って、
…恭弥さんと、運転を交代して貰う事に成功した。


彼は、大丈夫だと言ってるけど、
連日の、…深夜にまで及ぶ仕事で、かなり疲れているに違いない。





「安全運転で、ゆっくり行くので…」
「良かったら、少し身体を休めて下さいね。」



「…分かった。」
「じゃあ、少し休むから、運転が辛くなったら遠慮なく起こして。」



「はい。大丈夫です、無理はしませんから。」



「…うん。」




話終わると同時に、
助手席の椅子を、少し後ろに倒して、楽な姿勢になり…
ゆっくりと、目を閉じた彼。

物音や、環境の変化に敏感で…すぐに眼を覚ます程の人にしては珍しく…
あっと言う間に…
静かな寝息を立てて、寝入ってしまった。




…やっぱり…、ものすごく疲れていたようね…

なのに…無理をして、
こんな真夜中のドライブに、連れ出してくれるなんて…

今更ながらに…
彼の優しさが、…とても嬉しく、有り難く思う。







恭弥さんは、
自分にも周りにも厳しい…“苛烈な人”だと思われているけど…
確かに、そうではあるけれど…、
それも事実だけど…

本当は、同時に…とても優しい人でもある。



他人に全く関心がないフリをしているけれど、
実はそうじゃない…
ちゃんと、周りの人の動向や気持ちには…気が付いてるし、
彼なりの対応だって、さり気無くする人だ。



だた…それが、
素直でストレートな、行動や言葉ではない事が多いので、
誤解される事が、あるだけ。


彼と付き合いの長い方々は、
そんな事をちゃんと理解して下さってる…。





今日のように…私相手の時のように…

他の人にも、ストレートに言えるのなら
そんな誤解も解けるのだろうけど…

彼の性格を考えたら…それは無理そうね…



…それは…仕方ない事、かな…?






そう…こんな風に、
彼が、本音を晒してくれるのは、
…私だけに与えられた特権。

無防備に…
安心したように、隣で寝息を立てて寝てくれるのは…
最大に、心を許している相手である…その証拠。





長い年月を、共に暮らし…


2人で紡いで来た…“絆(キズナ)の証(アカシ)”











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あきゅろす。
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