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時を重ねて 8



「…君は十分に…僕の支えになってるよ。」
「僕は、優子がいるから、色んな事を頑張れる。」

「そんな僕の大事な支えである、優子の笑顔見たさに…」
「…真夜中に、海を見に行く程だよ。」



「私の…為?」
「…今日、海に来たのは、…私の為だったのですか?」



「うん。…君が、こっそり泣くから。」
「君と話す時間が、最近殆ど無かったから。…だからだよ。」



「そんな…ワザワザ…。」
「だって…恭弥さんは、忙しくて疲れているのに…」



「多少疲れてても…」
「2人でゆっくり出来る時間を作る為や…」
「優子を笑顔にするためなら…時間を割くさ。」









「………。…有難う、ござい、ます…」





「…何、泣いてるの。」

「本当に君は…スグに泣くね…。」
「泣かれると、僕が困るんだ…。泣かないで…笑いなよ。」





そう言いつつ…
今まで背後から、抱き締められていた腕を解き…
クルリと、私の身体を反転させ…
正面から覗きこんでくる…。


ゆっくりと眼を閉じた、私の目尻に浮かぶ涙を、
そっと指で拭い…額に軽くキスをされた。





…そうやって、甘やかすから…
余計に涙が出るんですけど…

そう思いつつ…未だ涙眼の私が、彼を見上げると


…再び、額に軽いキス。








その後、軽く抱き締めながら…
耳元で囁くように話す彼…。



「優子が、こうやって僕の傍にいてくれる事自体が、僕の支えになってる。」
「…それだけで十分だよ。」



「恭弥さんは…確かに私の支えです。」
「…貴方の居ない生活なんて、考えられないですし…。」

「でも、私は…。」
「私は…貴方に何か、してあげられていますか?」





「うん。」
「家事だって何だって頑張ってるじゃないか。」
「それに、優子がいるから…僕には不安がない。」
「お陰で…仕事に専念出来る。」

「…いつも感謝しているよ。」






「そんな…私は当たり前の事しか、出来ていないのに…。」
「…感謝しているのは、私の方です…。」



「(クスッ)…そんな事でムキにならなくても良いだろ?」
「…お互い様で、良いじゃないか。」



「それだと、何だか…私が負けてるみたいで、嫌なんです。」








「この僕に…勝負事を挑んで、勝てるなんて思うの?」



「…勝負というか…」
「その、感謝の気持ちの大きさというか…。」



「どちらでも一緒だよ。」
「…悪いけど、君に勝ちを譲る気は無いよ、一生ね。」



「………。…貴方はいつも、そうです。」
「…何だかズルイ。」






クスッと笑いつつ…、満足そうな顔をして…
再び額にキスをされ、
少し降りて、瞼にそっとキス…
次に、頬に軽くリップ音をさせてキスした後は…

ゆっくり優しく唇が重なった…。






耳に入る…潮騒の音。

自然の奏でるBGMを聞きながら…仄かな月明かりの中…
何度か、柔らかな口づけを交わした。





「身体が冷えて来たね。…そろそろ、帰ろうか。」



「はい、そうしましょうか。」





夜の砂浜を、手を繋いで、ゆっくり歩く…

仄かに…辺りを照らす、優しい月明かり。
心地よいリズムを奏でる波のBGM…
暖かく繋がれた愛しい手。


その全てが優しく―――、



……私を、大きな幸福感が包んだ……











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