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時を重ねて 6




ゆっくり歩いて、波打ち際まで来た…。

この辺りは、海水で濡れている為に、砂に足を取られる心配はない…。

ゆっくりと、お互いの手を離す…
…ほんの少し感じる、寂しさ…。




立ち止って、暫くの間…波の音に聞き入った。
…不思議なリズムを刻む、潮騒…
子守唄のようにも聞こえて来る、心地よさ…

あぁ…こんなのって…癒されるな…



大いなるものに、包み込まれているような、
まるで地球(自然)と、一体になったような感じ。



…自分の中の、不安や荒い気持ちがなくなり…

…穏やかで、優しい気持ちになる…








夜中の海岸を、時々風が走る…
流石に…この時間だと、少し寒いかな…

そう思っていたら…
何時の間にか、私の背後に廻った恭弥さんが…
そっと抱き締めて来た…


2人揃って…月光が鈍く淡く照らした海の方を見ながら、
背中の彼の熱を、暖かく感じていた…




「思ったより…、寒いね。」



「そうですね…。でも、今は暖かいです…。」



「うん…。」
「優子は、我慢してなかなか言わないからね。」
「…寒いなら寒いって、ちゃんと言いなよ。」



「我慢なんて…そんなにしていませんよ?」
「…私って、我が儘ですから。」



「…そうかい?」
「じゃあ…最近、…君の枕が濡れてるのは、どうして?」



 (( !? ))









「最近、仕事が忙し過ぎて、会社に宿泊する日も多かったし…」
「僕が居ない日には…寂しかったんだろ?」




「………。」




「僕が気が付いてないと、思った?」








「…どうして…?」
「…どうして、そんな事を…知ってるのですか?」




「会社に宿泊した翌日…」
「置いてる着替えの服では、不都合がある日に…」
「早朝に、一旦帰宅する事があるけど…」

「そんな日には…いつも、君の枕が濡れているのが」
「…気になっていたんだ。」

「優子は、何事も無かったフリをして」
「…笑顔で、僕を迎えてくれるけれど…」
「本当は…その数時間前まで、泣いてたんだろ?」






「………。」






やっぱり…彼は鋭い。


恭弥さんが、帰宅しない日の夜は…寂しくて…
何時もは見ないテレビを見たりして、気を紛らわすけど…

イザ寝る時になると、
“もし、このまま会えないなんて事になったらどうしよう?”なんて…
自分でも呆れる程に、ネガティブな事を考え…、
挙句に、哀しくなってしまい…知らずに泣いてる事がある。

そんな日は、見る夢も哀しかったりして…
朝起きると、自分でもびっくりする程に、枕が濡れている事すらあった…




だけど…まさか…
あの濡れた枕に、気が付いていたなんて…

あれを…見られていたなんて…


あまりに情けない、
あの事だけは…知られていないと思っていたのに…


あぁ…どうしよう…。




…………。










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あきゅろす。
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