時を重ねて 2
++++++
+++
+
あと1時間程で明日になる…という時刻に、帰宅した彼…。
最近、仕事が忙しいらしく
これでも今日は、帰りがかなり早い方だ…。
何時もなら…軽く、もう一時間ぐらい遅いのに…
「…ただいま。」
「お帰りなさい…恭弥さん。…お疲れ様でした。」
「…お食事は?」
「もう食べて来たから、要らないよ。」
「それより…優子、今すぐに出掛けられるかい?」
「…海に行きたいんだ、ちょっと付き合いなよ。」
「…えっ…今から? …こんな真夜中に海へ?」
「そう。」
「まぁ、行っても真っ暗で、何も見えないだろうけど…。」
「……波の音を聞きたい。」
「波の音…?」
「…良いから、早く準備しなよ。」
「僕は着替えて来るから、その間に優子も…準備をしておいて。」
++++++
++++
+
一方的に、
『今から出掛けるから、付き合え』宣言をされ…
バタバタ準備をし、何が何だか分からないまま…
車に乗せられ、今に至る…。
スーツ姿から私服に着替えた彼は…
いつもの厳しい感じはあまりなくて
ゆったりと、このドライブを楽しんでいるようにも…見える。
かっちりした背広ではなく、
どこか寛いだ雰囲気の服装が、そう思わせるのかもしれない…。
彼…恭弥さんと知り合って…
…かれこれ10年以上は経つ…
その間に…今日のような、
“一方的に決めつけてしまうような場面”は、
数限りなくあったし…正直、慣れてもいる。
でも、相変わらず…何を考えているのか、分かり難い人…。
私の隣で、流れるような
優雅な動作の運転をしている恭弥さんは、さっきから無言…。
彼の方から、話し掛けて来ないのは…
(最近の…)
(忙しい仕事の事で、考えを巡らせているのかもしれない…)
(もし、そうなら…話しかけられるのは迷惑だろうし…)
…と、そう考えて、私もずっと無言。
仕方がないので、流れる音楽に耳を傾けつつ…
窓の外の景色を眺めている…。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!