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時を重ねて 12




そっと、背後から…彼に近づいて… 
一緒に子供達の健やかな寝顔を見る。

幸せそうな、満足そうな顔で…静かに眠る子供達を前にして…
2人で、顔を合わせ、一緒に微笑む。



この――


……“世にも、幸せな瞬間”……




全てが満たされ、満足し…
明日への希望の鐘の音さえ…聞こえて来そうな気がする程の…
…“とてつもない幸福感”に包まれる瞬間。





私は、この瞬間が大好きで…愛おしくて仕方がない。

こんな時には、感謝の気持ちしか…出て来ない…。
素晴らしい夫と、素晴らしい子供達に囲まれて
…こんなにも穏やかな幸福を、感じる事が出来る私は、
間違いなく、“世界一の幸福者”。




誰が、なんと言おうとも…そう。 

…世間の、客観的な事実なんてものは、どうでも良い。
今大事なのは…自分自身がどう感じているか?
…という事。
私が、心から…自分は世界一の幸福者だと思えるのだから、
…それで良い。

…そんな風に…思う。






心から敬愛する夫…恭弥さん…
その、鋭くも美しい瞳が、優しさを湛えた光を帯びて…
子供達を見守る姿…に、見惚れていたら…



さわっ さわっ!


…と、窓の外の、大木の葉擦れの音と共に…
一陣の風が吹き…子供部屋のカーテンを揺らした…





…刹那(せつな)…

カーテンの隙間から…沫い月光が室内に射し込み…
子供達の寝顔と…恭弥さんの顔を照らす…

静かな、聖なる光をスポットライトにしたような…
一枚の絵画のような…
あまりに美し過ぎる瞬間に、思わず息を呑んだ。 






こんな…静かな幸福感も、良いな…と思う。

躍動的で、活動的で…
見るからに幸せそうに笑顔が花開いてる場面も、
それはそれで…素晴らしい。
そして…その担当は…もっぱら私。


でも、今日のような…静かな、落ち着いた幸福感…
それでいて、全てを満たしたような…幸福感は、
どちらかというと…恭弥さんの担当?

…そんな気がする。



この人は…そんな“上品で心地よい静寂さ”を身に着けた人で、
冷静で、落ち着きのある人だから…

こんな場面が、…本当に様になる。









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