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時を重ねて 11




静かに階段を上がり、予測をつけたお部屋へ行ってみると…


…そこには…、
とても優しい、慈愛の籠った瞳の…恭弥さん。




普段、…滅多に見せない…
こんな時だけにする、優しく、どこか満足そうに見える表情。


ジッと見つめて…ほんの僅かに微笑んでる…

こんな時の彼は、一体何を想っているのだろう?








彼の眼の前には…
気持ち良さそうに、スヤスヤと眠る子供達。

恭弥さんが、肌蹴てしまった布団を、そっと掛けてあげ、
満足そうな顔で…また見詰める。




父親である恭弥さんに、容姿も性格も…似ている子供達は…
幼い頃から自立心も、プライドも高く、自己主張も凄かった。
正直、一筋縄ではいかない子供達だ。

唯一、私とだけは…そこそこの関係を築いているけど…
基本的には、あまり干渉しないでくれ…というスタンスの子供達。  

それぞれ…とても個性が強い。





そんな子供達と、彼は…
お互いに、ライバルであり…お互いに一目置く存在であるようだ。

最も、恭弥さんのほうは、大人の余裕で…
フフンと笑って、
“正面から相手をしてやるには20年早い”…、という態度だけど…

子供達にしたら、あの父親に負けたくないと…
内心、とても闘争心を燃やしているのが判る。




お互い、そんな性格だし…
家庭内で、和気あいあいとした家族など、演じる筈もなく…
父子が顔を合わせ、長い会話をする機会はあまりない。


お互いがお互いを、微妙に避けている上に
生活時間がズレているため…食事も一緒にとる事は少なく…
一見、とても冷たい関係の父子に、見える…。





だけど…実は、彼が…
とても子供達を愛しく大事に思っている事を…私は知っている。

子供達が寝ている時…病気になった時…怪我をした時…
そんな特殊な時にしか、見せない、
…彼の本音を、私は知っている。






そう…今、眼の前で彼が見せている…慈愛の眼…

子供達の事を、心から慈しんでいる…愛している事が伝わる、その表情。
けれど、彼は…子供達が起きている時には、意識がある時には…
決して、その表情を見せない。



きっと、それが…彼なりの…

“子育ての流儀”・“父親としての態度”なのだろう。







そして、恐らくは…影での父親のそんな態度に、密かに気が付きつつ
全く知らないフリをしている子供達が…
深く父親を尊敬し、敬愛する心を持っている事も…私は知っている。

決して…それをストレートに、表には出さないけれど…。




“似た者親子”…まさに、その言葉通りだと思う。










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