時を重ねて 1
窓の外の、流れる光を無言で眺める。
暗くて、風景はよく見えないけれど…
その代わりに、昼間には見られない光の洪水…
沢山の数え切れないほどの、灯(あかり)達を眺めていると、
この国は、豊かな国なんだなぁ…と、
…ふと…そんな事を思う。
真夜中の高速道路を、滑るように走る
真っ黒なサルーン(セダン)…
車内には、ゆったりしたエンヤの曲が、静かに流れている…
早過ぎも遅すぎもしない…
車の流れに乗って走る車は…殆ど振動もなく、とても快適。
細く長い指を、優雅にハンドルにかけ、
惚れぼれする程のドライブテクニックで、運転する彼…
何時も思うけど…本当に優雅でキレイな運転…
単なる安全運転…と、
いうものではなく『優雅で美しい運転』なんてレベルがある事を
彼の運転を見て、初めて知ったものだった…。
何と言うか…、全てに無駄がない。
車の走り自体にも、彼の運転中の動作にも
…全てに無駄がなく美しい。
最も彼は…何時だって、
その全ての動作が優雅で美しい…そんな人なのだけど…。
食事をしてても、本を読んでても、仕事中でも、
…彼の大好きな闘いの時ですらも…。
“優美である”…とは、
こんな状態なんだ…と思わせる人。
無言で運転をする彼は…何を思って
急に…こんなドライブに誘ったのだろう?
イキナリ過ぎて…全く理解不能。
もっとも、この人の『イキナリ・突然』は…
何時もの事だけど…。
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