はじめまして、さようなら。
6
冬の夜は、長い。
夏なら、空は微かに白み始める時間だけれど、
今はまだまだ暗く、窓を開け身を乗り出してみても、
どこまで先も見渡すことができない。
ずっと、ずっと。この暗闇の中で、なんて。
「僕、ちっちゃい頃姉ちゃんと、
夏祭り行って金魚掬いしたんだ。」
藤坂は、たまに合図地を打つくらいで、
僕は殆ど独り言のように話した。
「本当に、綺麗だったんだ。
狭い屋台の水槽の中を、
赤い金魚が行ったり来たりしてて。
尾鰭が、羽みたいって思って。
この中じゃなければ、
飛べるんじゃないかって思うくらいに、綺麗で。
だから、僕が飛ばせてあげたいって思ったんだ。」
なのに、僕は飛ばせてあげるどころか。―――。
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