はじめまして、さようなら。
5
途端。
携帯が、返事をするように震えた。
吃驚して、ただ手の中の携帯を見つめると、
画面に
―着信中 藤坂泰介―
の文字が浮かんでいた。
訳も分からず、ただ反射的に通話ボタンを押した。
『もしもし』
聞こえたのは、機械を通してだからか、
声を潜めているからなのか、
少しだけくぐもった藤坂の声だった。
「もし、もし」
ぎこちなくなりながら、僕も返す。
『こんな時間に、ごめんな。』
「ううん。もう眠れないかもって思って暇だったし」
そっか。
藤坂が息を大きく吐いたのが分かった。
『夢、話してよ。正夢になっちゃう。』
「っ、僕の夢の話聞くために、電話したの?」
息が詰まった。声も少し裏返った。
うん。
何でもないように、藤坂が頷く。
「たぶん、正夢にはならないと思うけど」
それでもいい?と聞くと、
柔らかい、やわらかい声で藤坂は再び頷いた。
『うん。嫌じゃないなら、聞かせて』
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