女神に愛されし者 1. ***** 「なぁー、ファイ、やっぱ怒ってる?」 スタスタスタスタッ…。 俺の問いに答えず、黙々と背を向けて歩く人物は、俺の親友…ファイアース・イル・アリネス(19歳)。 普段は温厚だが、一度怒らせると怖い。 ちなみに、出会った当初…4年前までは泣き虫だったのに、成人した現在(※この世界の成人は18歳)ちっとも弱みなど見せず、年々図太い性格になっている気がする…。 「怒ってない。ただ呆れているだけだ」 漸く、答えてくれたかと思えば、口調は低く、どう見ても怒っているようだ。 やっぱ、あれはマズかったか…。 俺ことエイリス・テア・オルヴァーン(19歳)は、数日前、器物破損の罪で、アリネス国の南の地にあるハーデュスの森に追放を言い渡されていた。 こうなった原因は色々あるが、第一として、俺が【女神に愛されし者】になったことが、このような事態に繋がったことを強く主張したい!! 【女神に愛されし者】…こう呼ばれるようになったのは2年前…。 当時17歳の俺は、自国オルヴァーン国の滅亡を目の前で経験し、その後、アリネス国に身を置くことになる。 17歳…たしかにこの時俺は普通の人だった。加護の力も持たない…ごく普通の少年。 しかし、アリネス国に着いてみれば、栗色だった髪は赤に、薄茶だった瞳は右が金、左が銀色。 そして、これにはおまけも付属して、背中にはいつの間にか女神の紋様が青で描かれていた。 赤…火の力、青…水の力、金…土の力、銀…風の力。この色がある人間は、女神の加護の力を使え、加護持ちなどと呼ばれている。 そして、この色に変化した俺は、当然…てか、必然で加護持ちになっていた。 しかも、異例中の異例で全部の力が使えることがわかると、神殿にいる神官長から、「エイリス様は、女神ヘステリーナ様の使徒様となった!」と、騒がれ、のち、ありがたい称号(【女神に愛されし者】)を与えられてしまった。 ちなみに、最近気付いたことだが、俺は怪我をしてもすぐ治る、治癒能力まで手に入れていることが発覚。 と、まぁ、そこまでは、俺にとって不幸中の幸いという話しで、ここからが重要!試験に出ます!←嘘です。 俺は加護の力を持っていても、なぜか上手く操ることができないことが、発覚したのだ。 そのため、日夜力の制御に務めていたのだが…酒場全壊、住民が使用していた広場に大穴けるなど等の破壊活動を(けして、故意ではない)、相次いで発生させてしまい…。 そして、とうとう数日前にアリネス国の城の一部を破壊…現在に至る。 [★過去へ][☆未来へ] [戻る] |