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女神に愛されし者
10.

 これには神官長も微妙な顔をし、眉を下げる。

「いくら中立とはいえ、アリネス国王が倒れている間に、強引に王となろうとしているグラディス様を神殿側は良しとしなかったのです」

 中立というからには、グラディスが自身の王位の正当性を神殿に言うなりなんなりすれば、協力もしようという気になったのかも知れない。

 が、どうやら、ことはグラディスと第一部隊で決行されているようで、神殿としては邪魔するほかないということか。



 フムフムッと、頷いていると、神官長は、俺に急ぎの話しはあるものの、この姿をどうにかして欲しいらしく、服を1枚俺に渡す。

 俺は嫌な予感がしてならない…。

 恐る恐る広げると、予想通りで………少し泣きたくなった。

 青いドレス風な服………。

 裾は長く、腰はごつい金のベルト…そして、俺が一番嫌な背中がパックリあけている服。←ドレスとは言いたくない、エリ。

 背中が開いているのは、俺が着ると背中の女神の紋様が見えるようになっている構造だからだ。



「やっぱり、服はこれなのね…」

 思わず出た俺の言葉に、神官長も「規則ですから…」と、微妙な顔をする。

 使徒である俺が、これを甘受するしかないのは理解するけどーーー!!これって、なんでファイがいた時代と変わらないんだよーーー!!

 そう、この服(ドレス)はなぜか、時代が変わり、王が替わっても、同じなんだよねーーー!!

 男の俺がドレスっっってーーー!!これを考案したのは、今は亡き(←当たり前)神官長ですけど、毎度毎度着せられるこっちの身にもなれーーー!!



 しかし、今はこれを着る訳にはいかないから、少しは良かったのかな?

「神官長………俺は、今ここにいることを知られる訳にはいかない」

「はぁ?」

「今ここに俺がいることをグラディスに知られると何かと厄介。しかも、今まさに王家の争いは、佳境に入っている。現段階では、俺は何も役に立たない。今はまだ…」

「…はい。わかりました。それでは、ここにいる私と数名の者以外、エイリス様のことを口外しないようにします。しかし、エリ様、服のほうは…」

「この服で神殿内を闊歩する訳にいかないでしょ?」

 俺は服を一つまみして、ヒラヒラさせる。

 それに了承するように、神官長は頷き、無難な神官服を用意してくれることになった。



 密かに、あの服を着なくてよくなったことを喜んでいる………なんてことは、内緒だ。


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