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女神に愛されし者
9.

 ここでふと違和感をかんじた。

 おかしい…。俺はずっと生きていた中で、オルヴァーン国もアリネス国のように想い出していたはずだ。

 オルヴァーン国には俺の両親や弟、それに城下町のみんなとも仲良くしていて…あれ?

 俺、オルヴァーンが滅んでから一度でもあそこを訪れたことがあっただろうか?

 訪れたはず………でも、いつ?



『エリ、この場所には2度と近づいてはいけません』

『フンッ、胸糞悪い空気だな、ここは!!俺様は、ここが嫌いだ!』



 あれ?この声………誰だっけ?

 俺、何か忘れている?

 椅子に座りギュッと目を瞑り、その声を想い出そうとするが、ここでノックがされ俺の思考はそちらにゆく。

 なぜかこの時、それまで考えていたことをすっかり忘れる。



 俺がこの時、この声の真意を思い出せていたのなら、いくつか起きなくてもよいことがあったかもしれない。

 でも、その時の俺には、これが重要なことなどと思いもよらないことだった。






 部屋のノック音に返事すれば、神官長を示す青に金の線が入った服。

 この人が神官長か…。

 神官長は、50代前半と思われる少し白髪が入った茶色の頭髪、鳶色の目は優しく下げられ、俺に敬意を表しているようだ。

 俺の前に来ると片膝をつき、最大限の礼をとる。

「エイリス様、お待ちしておりました。アリネス国は今王位争いで乱れています。なにとぞ、貴方様のお力を…」

 俺はそれに苦笑いを浮かべ、立ち上がるように言う。

「見ての通り、俺は今日…と、言っても昨日か。王殺害という罪を被せられ、事情はここより多くのことを知っている。協力は惜しまない…。で、神殿は今王家に対し、どのような位置にいる?」

「神殿は2000年前より中立。そして、今もそれは変わらず、城の情報もこちらもある程度把握し、グラディス様の邪魔をしていたのですが、どうやら、それも限界で…」

 ここで、神殿が中立っというのも驚いたが、グラディスの邪魔なんて危険なことをしたことにビックリして、目を見開いてしまう。


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あきゅろす。
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