女神に愛されし者
7.
道すがら、少年に訊ねた。
なぜ、俺の背中の紋様の是非を問わないのかと。
「神官長様がおっしゃいました。もしかしたら、この時期に女神の使徒…エイリス様が姿を現すかも知れないと。それから、ぼく、いえ、私は女神の紋様を死ぬほど見ることを義務付けられ、いつでも、エイリス様の紋様を確認できるようにしていました!」
嬉々と答える少年は、その後、任務完了とばかり不満を話す。
「エイリス様、本当に大変だったんですよ〜、ぼく。寝る間も惜しんで紋様と睨めっこばかりで、半年前から神官の勉強よりも紋様の青い図柄を1つ1つ確認することばかりで!」
不満を口にしているはずなのに、少年はなぜか嬉しそうにし、いかに大変だったか話し続ける。
昔の弟のようだな…。
弟も突然できた兄である俺に、いつも興奮して様々なことを話した。
『にぃ様、今日は女神ヘステリーナ様のことを勉強しました!女神様は、僕等の祖先になりますけど、本当にすごい人なのですね!!僕もきっと女神さまのように立派な王になります!』
『にぃ様、本当にアリネス国に留学するのですか?もしかして、僕が嫌いになって…』
『にぃ様、大好きです!』
目を瞑れば想い出す。懐かしき日々…二度と戻らぬ日々…。
この少年のように笑う人々を不幸にしたくない。
グラディスの野望は、俺が潰す。
自分の決意に思わず笑いが漏れる。
こんな熱血…オルヴァーン国を復活させようとさえしなかった自分が持つなんて…。
ふと、ファイもそんなことを考えながら王を務めていたのだろうか?など、考えてみる。
うん、これも悪くない。
特に、ファイアース、君が愛した国…。
今はカイ隊長がいる国………俺は正体を明かしたくないばかりに、アリネス国王を死なせてしまった。
これからは、俺がやるべきことを…。
たとえここで、俺の正体が明らかになり、カイ隊長に崇められる存在になろうとも、これは俺のけじめだ。
[★過去へ][☆未来へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!