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女神に愛されし者
15.

「エリさん、もうその辺でAHを使わず、お食事に………いえ、これは失言ですね。この部屋ではAHが使えないはずですから…」

 リンジィー隊長の言葉に俺も苦笑いし、力を止める。

 この部屋はAH封じの部屋………それでは、どうやって俺は情報を得ているのか?

 これは、どんな小さな子供でも予想がつくだろう。

 俺がAH封じの部屋でも力が使えることを…。

 それに、もしかしたら、カイ隊長は俺の首環を持っているはずだから、首環のAH封じの力が発揮しているのに気付き皆に話したのかも知れない。

 カイ隊長は、それを平気で身につけている俺に、この部屋で過ごす意味がないことも気付いているのだろうか?



 リンジィー隊長から受け取ったお盆の上には、俺の身体を気遣って、雑炊のような食の進むものばかり盛られていた。

 ありがたいが、頭の情報が多すぎてスプーンが止まる。

 頭が痛い………いらない情報が多過ぎる。

 夜、城の人数は少ないが昼間となると、おのずと城で活動し、働く人数も増え一気に情報が溢れる。

 その中で、いる情報・いらない情報を掴む訳だが、量が多すぎて1人で対処するには限界だった。



 本音は、この力を使える人員がいれば任せたいが、これは特殊技能と言っていいくらいの代物で、この地で使えるのは俺くらいだろう。

 昔、それこそオルヴァーン国が健在でいた時代なら、AH使い達に使えるものはいたかもしれないが………オルヴァーン国が滅んでから、AH使いが生まれにくくなると同時に力も低下している。

 これでは、俺が他のAH使いに頼むのも気が引ける。

 力の使い方を教えても、使えないだろうという俺の結論だ。

 そのため、頭痛はもちろん吐き気、立ちくらみは当たり前、食事など身体が受け付けるはずもなく、日々俺は弱る一方だった。

 しかし、昔(過去)のように意識を失わず、諜報活動してられるのは、半分意地と半分罪滅ぼし………俺が【女神に愛されし者】と言えないのであれば、これくらい死ぬ気でやらなければという思いからだ。


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あきゅろす。
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