女神に愛されし者 3. それから16年後…。 俺は、アリネス国の城下町に昨年から暮らしていた。 本当は、こんな目立つ場所に暮らす予定ではなかったのだが、用心棒として馬車の警護をしていたら、雇い主に気に入られ城下町に住むことになった。 雇い主の本職は宿屋兼酒場。 宿屋というよりは酒場のほうが強く、たびたび荒くれ者が訪れるため、用心棒として雇いたいとのこと。 もちろん、用心棒以外の時は、給仕をしたり、酔った人の介抱をしたり、宿屋の掃除をしたりしている。 ここで俺の武器の話しをしたい。 俺の武器は二刀剣だ。 この二刀剣は曰く付きのモノで………俺も何でこれを手に入れてしまったのかと、時折り思う品だ。 ついつい好奇心で大昔に手に入れてしまった二口(ふたふり)の剣。 もし、その当時に戻れるものなら戻って返したい。 実はこの剣の1本は、女神ヘステリーナの剣…白晶(はくしょう)、もう1本の剣は、女神の対となる神…今はどの歴史書にも記されていない堕神の剣…黒晶(こくしょう)だったりする。 う゛うぅっっっ、もしファイが生きていたら止めてくれただろうけど、その時もうすでに俺は1人で、誰も止めてくれなかったんだよねー。 正確には、この二口の剣がある場所には近づくなと村人に言われたんだけど、好奇心に勝てず………今、こうして俺が所有している。 この剣は不思議剣だ。 別にしゃべるとか女神の加護の力を使う訳ではないが、剣を持つと剣の意思が頭に直接伝わってきたり、不思議な言葉にはできない妙な力を感じられる。 白晶の性格は、冷静沈着てな感じで敵を感知すると、俺に知られてくれたりする。 一方、黒晶の性格は………さすがは堕神の持ち物、扱いづらい。 自己主張が激しく戦いの最中でも、俺の意思そっちのけで戦いの真っ只中に行きたがる。 それで何度か死に掛け…いや、死なされたか…。 と、まぁ、俺の武器の話しはこの辺で、今夜アリネス城に忍び込む用意でもするか。 そう、双子の王子が生まれて16年目、とうとう、アリネス国で王子の王位継承権を巡って、内部紛争が始まろうとしていた。 [★過去へ][☆未来へ] [戻る] |