続・死神とダンス♪〜君を救う光〜
06.登校ですぅ★
否応なく、日は昇り新しい一日が始まる。
清々しい朝のはずが、田伏萌葱にとっては苦痛の朝である訳で…。
朝食はぼくが簡単につくり、そのあと学園に向かうが、隣にいる杉崎くんに罪悪感が生まれる。
視線がぶつかる………しかも、小声にしては大き過ぎる声が聞こえてきて…。
「ちょっと、アイツ、まだ学園にいたの?しかも、隣の可愛い子はなに?またアイツは誰かを唆しているの?」
「確か天罰で兄貴が死んだんだろ?なら、なんでこの学園にまだいるのさ?」
「さぁーねー、案外あの平凡な容姿で、理事長まで誑かして居座る気じゃない。クスクスクスクスッ」
痛い言葉の連続………きっと、これでぼくのイメージは地の底で、杉崎くんにも嫌われ離れて行くのだろ。
しかし、杉崎くんはぼくを嫌うどころか、それよりもぼくにとって力強い行動をとる。
「お前達、そんなことばっかり言って恥はないのか!?下賤な噂ばかりで、ここの生徒の品位を僕は疑うね、恥を知れ!!萌葱、こんな声なんて気にすることはない!行こう!」
その後、引きずられるように杉崎くんに手を引かれ教室に向かうけど、なぜか杉崎くんは職員室に寄ることもなく、ぼくのクラスに入って行く。
ガラッと、扉を開き2年3組の教室にズコズコ入って行く杉崎くんに、ぼくは引きずられて進んで行く。
確かにここはぼくの教室で入ってもおかしくはないけど、杉崎くんは別だ。
転入して来たからには、職員室で担任に挨拶しなければならないし、その後、転入生のイベントであるクラスメイトに自己紹介も当然ある訳で…。
「ま、待って、杉崎くん!ぼくはここのクラスだけど、杉崎くんは職員室に行かないと………あれ?そう言えば、何で杉崎くんはぼくのクラスを知っているの?」
当然な疑問を発したはずなのに、杉崎くんは一瞬キョトンとしたあと、盛大に笑ってくれた。
「あははははっ、ごめん。そう言えば、萌葱には言ってなかったよね。昨日入寮する前に担任の先生に挨拶も済ませていたし、ちょっと事情があって今日は、先にクラスに行くように言われたんだ。もちろん、同室である萌葱と同じクラスだと聞いていたよ」
天使の容姿で微笑む杉崎くんに一瞬見とれるものの、ぼくは自分の席に座るため窓側の前から2番目の席に近づく…そして、なぜか杉崎くんも。
新しい机が入れられたところは、窓側の一番後ろで、そこが杉崎くんの席だと思っていたのに………どうしたのだろう?
不思議に思っていると、ぼくの席の前に座る子と何やら交渉し始めて、数分後には杉崎くんの席になっていた。
「どうしたの?席はたぶんこの列の一番うしろだと思うけど?」
「………身長…。一番うしろの席だとちょっと背が足りなくて…別に黒板の字が見えないとは言わないけど………モソモソ」
最後は確実に言葉を濁しているけど、明らかに背が低くうしろじゃ困るということなのだろう。
ぼくは170pあるけど、杉崎くんは………160pあるかな?
あまりにもジィーと杉崎くんを見過ぎていたためか、只ならぬ空気が流れてきた。
「萌葱、今、僕のことで考えていることを止めないと………友達止めるから」
「ヒィィ!」
思わず素で驚くものの………今、口にした杉崎くんの言葉を思い出し、今度はぼくのほうが杉崎くんに詰め寄る。
「と、友達!?それって、『ぼく』とってことだよね!!」
「う、うん、えっーと、昨日萌葱が眠ってしまう前に友達になろうって………それと、僕のことも『しのぶ』って呼んでいたよ」
………昨日のことは良く覚えていない。
突然眠くなって、起きたら自分のベッドの中だったし、きっと杉崎くんが必死に運んでくれたんだろう。
それにしても、眠る前にそんな楽しいイベントがあったなんて…。
「ぼく、あの時、寝ちゃって全く覚えていないんだ…」
「そっか…」
「でね、もう一度はじめから言わせて………ぼくと友達になって下さい!!」
この後、杉崎くんは全開の天使の笑みを見せてくれて………あとは言うまでもないよね。
でも、この時、杉崎くん…改め、しのぶが複雑そうな顔をしていたことにぼくは気付くことはできなかった。
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