続・死神とダンス♪〜君を救う光〜
02.ちょっと戻ってぇ♪
「馬鹿だ、馬鹿だと思っていたが………」
「ごめんなさい…」
「お前、この試験に合格すれば、第1級死神に昇進だったんだろ?何やってんだ?」
見た目かっこいい、黒スーツを着た3m超えの大鎌を右手に白扇子を左手にした男が、声を掛けた少年の額をペシペシッ叩く。
怒られている少年は、項垂れているものの、後悔の色は感じられず………男、いや大鎌を持つこの死神は、呆れつつももう一度ベシッと白扇子で小気味よい音だし、今後のことを話す。
「わかっていると思うが、死の時刻が終わる前に命を狩り獲ることは、死神にとってご法度だ。で、お前はそれらを無視し命を狩り獲った。罰は罰だが………しかし、閻魔のヤローは、お前にはとことん甘い…。ほれ、今回の罪はこれで勘弁してやるってさぁ」
死神に手渡された紙には、達筆すぎる字でこう書かれていた。
*****
死神、杉崎しのぶ。第2級死神を返上し、暫しの間●●学園にて普通の人間として暮らすことを命じる。
その期間死神の能力は使えず、且つ、武器携帯も許さず…過去人間であった肉体で行動すること。※病弱な身体は健康体にしておく。
尚、その期間、どのような行動をしても良いが、人の命を狩り獲ることは固く禁ずる。※しのぶ、この機会に【彼】の願い叶えてやれ。
追伸…第2級死神、杉崎しのぶの師匠兼相棒である、特級死神ゴウエンも同様の罰を命じる。※しのぶに何かあったら死ぬほど後悔させてやる!死ぬ気でしのぶを守れ!!
*****
「この『※』印の指示はもしかして?」
「あぁ、アイツしかいないだろ。しかも、俺様まで現世に降ろして只人にするとは!」
「師匠、申し訳ありません!!」
ガバッと土下座する勢いで頭を下げるしのぶにゴウエンは、苦笑いしつつも頭をついつい撫でてしまう。
「去年から相棒も兼ねているのだから、俺のことは「ゴウエン」と、呼べっと言ったろ。しかも、あの試験の時、見ていた俺も止めなかったから同罪だ。今回ばかりは、大人しく指示に従うさ」
死神の進級テストをしのぶは、あの時受けていた。
天候不順により船は暗礁に乗り上げ、甲板にいた幾人かは波にさらわれた。
突然の出来事で、救命胴衣を着る者は少なかった。
その場での死者3名。
その魂を死者の国に導くのが、しのぶの試験だったのだが、このあと数時間後に死ぬ予定であった男の魂までもしのぶは、狩り獲ってしまう。
こうすれば、この男の願いを死神の決まり事として、叶えることができるかも知れないと思って…。
しかし、しのぶのそんな予想は違って、叶えることはできなかった。
かつて、ゴウエン自身も経験し行ったことだが、死ぬ予定ではない魂を狩り、別な肉体に魂を移す………と、いう方法は許されなかった。
【彼】は、数時間後に確実に死ぬのが決まっていたから…。
しかし、数時間であっても生きていた人間の魂をしのぶは、無断で狩った。
その罪をしのぶは償わなければならない…が、しのぶに魂を狩られた【彼】は、最後の望みをしのぶに託していたことにより、この措置になったようだ。
【彼】の望みをしのぶに叶えられるかどうかはわからない。
それでも、隣にいるゴウエンが一緒だということが、勇気をくれているようで…。
心の中で閻魔様に「ありがとう」と、しのぶは呟いていた。
【彼】の願いは1つ…。
「某学園でいじめられている弟を助けて下さい」
[後退〜♪][前進〜♪]
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