続・死神とダンス♪〜君を救う光〜
01.願い。
小杉の発言の通りに船は揺れた。
立っているのもやっとだが、船内にいる田伏はその姿勢のまま窓を叩く雨をじっと見つめる。
ドッドドドーーーーンッ!!
突然、大きな音とともに船は揺れ、田伏はもちろん、他の乗客は座っていたにもかかわらず大きく身体を揺らし、床に叩きつけられた。
「―――!!―――!!―――!!」
田伏は頭を打ち付けながらも朦朧とする意識の中、甲板から聞こえる声に耳を傾ける。
「暗礁に乗り上げた―――い―――」
聞こえてきたのはそんな声。
他の乗客もそれが聞こえたのか皆顔を青ざめる。
しかし、田伏はこんなところで立ち止まっている訳にはいかない。
グッと奥歯を噛みしめ立上り、何が起こっているのかを確認するために、甲板に続く扉を開けた。
しかし、次の瞬間、甲板から波が押し寄せ………。
水泡が見える…手足は思い通りに動かず、光は見えない。
深い青一色、何も見えない………。
自分は死ぬのか?
そうか…俺は死ぬのか………数年前に死んだ両親に再び会えるだろうか?
いや!!ダメだ!弟を置いて行けない!!
俺がいなくなると弟が1人になる!
動け俺!!ここで死んだら誰が弟を守るんだ!!
必死に身体を動かそうとする。
しかし、波にさらわれる際、身体をどこかに打ち付けたのか、指一本動かせない。
ごめん………ごめんな。
こんな、ダメなお兄ちゃんで許してくれ…。
お前が必死に俺に助けを求めているのに、お兄ちゃん、お前に会いに行けなくなった…。
ゆっくり暗闇すらも閉じられようとする瞳にそれは突然現れた。
「えっ?光?」
海の中で声は出ないが、驚きで心の中で呟く。
光はゆっくり自分に近づき、それは天使に姿を変える。
「もしかして、僕の姿が見えてます?」
何とものん気な天使の声が聞こえた。
海の中なのになぜ声が聞こえるかという理由は、深く考えない。
田伏にとってこの天使は天国への使者だと感じたからだ。
だから田伏は願った。
天使なら救って欲しい…たった1人で、これから生きて行くであろう弟を…。
若い男性は海の中、最後の力を振り絞り口にする「弟を助けてくれ!」と…。
その数日後、天使の容姿をした少年が、ある学園に転入を果たす。
[後退〜♪][前進〜♪]
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