男前なんかじゃない!!2
081.体育祭開始。
10月10日、待ちに待った体育祭。
気合十分とばかり、ぼくは団長だけがするハチマキを額に当てる。
「よし!頑張るぞ〜!!」
団長のハチマキには『必勝』なる文字が書かれていて、ちょっと恥ずかしいけど、今は、その文字通りになることを信じて戦うのみなので、気合が入ります。
体育祭会場であるグラウンドには赤・青・黄のハチマキを手にしている生徒で溢れているが、どの生徒もまだ組として分かれてはいず、カラフル状態になっている。
ぼくは団長だから、体育祭の開始の挨拶をしなければならないので、いったんスイちゃんから離れるが、離れた途端人ごみに飲まれて右往左往しています。
こんな状態になっているのは、生徒から声が掛りその受け答えとしているせいだと思うのだけど、ついつい嬉しくて、一つ一つお礼を言ってしまうんだよね。
「結城君、頑張ってね!」
「うん!寛治くんの指導受けたから、一生懸命走るよ!」
「結城様、ぼく、応援しています!!」
「ありがとう。ぼくも望くんの出る競技は必ず応援するね!」
「結城君、違う組になったけど、漫画研究部は君を応援するよ!」
「木村先輩…ありがとうございます。木村先輩も怪我しないよにお互い頑張りましょう」
上記↑の会話のようなことを知り合いに会うたびしていると、当たり前だがステージに辿りつく訳がない…。
さすがに、ぼくもこれにはどうしようかっと迷っていると、人をかき分けて真弓先輩が迎えに来てくれました。
「ソウ、あと団長で揃ってないのはお前だけだ」
「ごめんなさい…」
シュンと首をすくめると、いつものようにガシガシ頭を撫でられ、手をつなぐような形で連行される。なんか捕獲された生き物の気分…。
ちなみに風紀委員は、体育祭に参加しません。
何でも、この時とばかり悪さする生徒が多発するとかで、見回りに忙しいと真弓先輩が言っていた。
ぼくも1年前の経験から、それは知っているので何も言えないけど、真弓先輩の体育祭の雄姿が見られないのは残念だなーって、密かに思っていた。
ステージ裏でカイリくんと挨拶して、で、仲谷くんと目が合うといつものごとく睨まれ、しかも…。
「今更、宗次郎が人気取りしても、おれが会長になるのは決まっている!!それに今度こそ、翠はおれのものになるしな!!」
自信満々の大きな声…。
仲谷くんの声は、ステージの表にいる生徒まで聞こえたらしく、ブーイングの声が聞こえてくる。
それに怒りステージの表に飛び出そうとする仲谷くんを止めるのは、当然、風紀委員で…。真弓先輩、今日はとても大変な一日になりそうですね…。
同情的な視線を向けるが、それは同じくぼくにも向けられる。
「???」
コテンッと、首を傾げて風紀委員のみんなに視線を向けると、真弓先輩は苦笑いをし、良人先輩から「リレー、頑張れよ」の小声に、ぼくは現実に引き戻された。
わ、忘れていたよ…。そう言えば、ぼくにはその最悪なイベントが、待ち受けているんだったー!!
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