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男前なんかじゃない!!2
073.お悩み相談。

 突然のぼくの涙に慌てるカイリくんは、「こんな時に蘇真は忙しいし!」と、なぜか怒った声があげ、次の瞬間ぼくは、カイリくんに抱きしめられていた。

「宗次郎のお悩み相談は、蘇真の専売特許だけど、今はオレで我慢しろよ!で、何を迷っている!」

 カイリくんと同じような背丈になっているぼくは、肩口に顔を抑えるようにしているので、カイリくんの顔は見えない。

 けど、カイリくんの声は怒っているような、でも、テレているような…。

 涙を流しつつそんなことを考えていると、カイリくんの声が一段と低くなり。

「宗次郎…お前、今何考えている?オレが柄でないことしているのに―――」

「はっひぃ!聞いてますですっ!!」

 続く言葉が怖くて遮るが、えーと、今感情をどのよう表現すればいいのか…。



「会長に戻りたいと思う…。こんなぼくでも役に立つことがあると思うから…。でも、前のようなことが起こったらって思うと…」

 カイリくんの制服のジャケットをギュッと握ると、次々感情が溢れてくる。

「応援してくれるのは嬉しい…でも、一回裏切っているぼくがまた会長になろうとするなんて…」

「別に裏切ったわけじゃないだろう?ただ、キャラを作っていただけで」

「う、うん、カイリくんの言いたいことはわかる。でも、リコールをされた時、ぼく一回みんなを裏切っているんだ。………なんと言っていいかわからないけど、あの時、ぼく全然反論しなかった。考えていたことはみんなのことじゃなく、自分のことだけで…」

 あの瞬間ぼくはみんなを裏切っていたんだと思う。

 数は少なくてもぼくを応援していた人がいたのに、ぼくはその声さえも聞こうとせず、そのまま逃げだしたんだから…。



「後悔しているのか?」

 カイリくんの言葉にコクリッと頷く。

「あの時、オレ達も宗次郎にこれ以上会長をさせたくなかった。それなら、生徒達を裏切ったのはオレ達も一緒だ」

「そ、そんなこと!」

「宗次郎、『そんなこと』あるだろ。オレ達も宗次郎のことしか考えていなかったんだから。でも、そう思っているなら、もう一度オレ達は、生徒達の期待に応えるべきだ」

「カイリくんはそう思って団長になることを決心したの?」

 このぼくの言葉にカイリくんは、何がおかしいのかクックククって、笑い初めて、「まさか」と答える。

 涙がすでに引っ込んでいるぼくは、その言葉に首を傾げるが、カイリくんは、尚、笑い続け。

「オレは、そんな大層なこと考えて団長に立候補した訳じゃないが、宗次郎は、みんなの期待背負って会長選挙に出るべきだ。出ないと後悔するし………男前が廃るぞ」

 最後は茶化すように言い、ぼくから身体を離し「覚悟は決まったか」と、ぼくに訊ねる。



 今度は間違えないように………。

 みんなを最後まで裏切らないで、より良い学園にできるように…。

 ぼく1人じゃ力はないけど、力を貸してくれる人は、去年よりも増えている。

 ぼくは1人じゃない…。



「カイリくん、ぼくもう一度頑張ってみてもいいかな?」

 カイリくんが大きく頷く。

「カイリくんとまた真剣勝負だね。でも、ぼく負けないから!」

「あぁ、オレもほどほどに負けないように頑張るっかー」

 カイリくんのやる気のあるような、ないような返事に2人でクスクス笑ったあと、ぼくは、蘇真先輩に報告するっと、鞄を手にし教室を出る。



 カイリくんから「葉山にじゃなくてか?」と、聞かれたけど、スイちゃんは、何となくぼくが迷いながらも会長選に出馬することを信じていたような気がする。

 そう、カイリくんに言うと…。

「ほんとお前達は…」

 小さく呟いたカイリくんの声は、僕の教室の扉を閉じる音にかき消された。


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あきゅろす。
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