男前なんかじゃない!!2
065.退場。
卓磨先輩に半ば追い出されるように退出する空也さんは、可愛そうなぐらい眉を下げぼくに校門前まで一緒に…って、言われたら………うん、思わず「いいですよー」て、頷いてしまうのは仕方がないよね。
空也さんは、ぼくの言葉にニコニコでなぜか手を繋がれて学園内を闊歩することになるが、ぼく等のうしろから付いてくるカイリくんは、これ以上はないかというくらいの凶悪顔。
うぅぅーーー、カイリくんが怖いよ。
こうして、ぼくとカイリくんは、空也さんを見送りに行くことになりました。
*****
※一乗寺空也が退場したあとの2年1組の様子。ちなみに、宗次郎とカイリは空也を見送りのためいません。
「初めまして、二条卓磨です。先ほど自己紹介もなく失礼しました」
きっきり90度の頭を下げる卓磨に宗次郎父、英次は笑みを深くし頷く。
「こちらこそ初めまして、宗次郎の父、結城英次と申します。君のお父さんにはいつもお世話になっているよ」
「いいえ、父のほうが英次さんにすっかり頼り切ってしまっているようで…。しかし、この前の仕事がブッキングした時、さすがに驚いたと言っていました。そこで、一つ質問してもいいですか?」
卓磨の質問に英次は頷くが、どこか面白がる様子が見られる。それは、隣にいる四ツ谷学園、幸江田奈留人も同じで、卓磨の口から何が飛び出すのか2人で面白がっている。
「仕事の話しではないのですが、どうして英次さんは一乗寺グルーブに就職せず、ライバル会社に就職したのかっと…。これは、父も疑問に思っていることですが、俺も興味がありまして…」
それにいち早く笑ったのは、奈留人。
「奈留人、失礼だろ」
小突くようにして言う英次だが、笑いは隠せないのかクスクス笑っている。
「二条君っと、父親と混ざるから、卓磨君でいいかな?その質問は私が答えてあげよう」
笑いを含みつつ言う奈留人に卓磨は気を悪くした様子は見せず、じっと続きを待つ。
しかし、その続きの話しは、頭を抱えたくなるような内容であって…。
「一乗寺(父)は結城(父)に惚れこむあまり、いきなり就職スカウトに来て、『○○会社の社長職を用意してあります。是非、一乗寺グルーブに来て下さい』って、言ったんだよ。さすがにこれには絶句したね」
ありえなさすぎる………しかし、卓磨は何となく想像できてしまうことに苦笑いを浮かべるが、ここで英次からは真剣なまなざしを向けられていた。
「さすがにそれは断ったけど…。本当は、一度だけでいいから一乗寺空也と同じ土俵で勝負がしてみたいと思って、ライバル会社に入った…。これは、空也にも、君のお父さんにも内緒だよ」
口に指をそえる姿は男前な英次に似合わないが、目は真剣だ。
その後、最後に小さな呟きが聞こえたが、これもオフレコにしていたほうがいいんだろうな。
卓磨は、父や空也に内緒ごとが増えることに少し罪悪感が生まれるが、なぜか口元に笑みを浮かべていた。
英次の呟き…。
「空也とはいまだ、本気で勝負してもらえない…。でも、いつか空也を超えてみたい」
……その願いは叶わないほうが、一乗寺グループとして、そして卓磨としてはいいはずなのに、なぜかその対決を見て見たいと思ってしまった。
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