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男前なんかじゃない!!2
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「空也、会場の提供はありがたいが、これは俺達の同窓会だぞ?」

「えーーー!でも、オレ英次先輩に会いたくて…。それに会場の感想とか聞いて、今度はもっと素晴らしいところを提供したいと思っていますし」

「そうか、でも、無理はしなくていいからな」

 ふっと、垂れ目を細め微笑み、数十センチ低い空也の頭を撫でてやる英次。

 男前な英次がそれをすれば、会場内からため息ともつかない「ほぅ」とした声が上がり、そして、それをやられた空也は顔を赤めつつも嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。



 ………本当にこれが、一乗寺空也ですかね。

 その光景を見ながら、奈留人は一乗寺空也について考える。

 高校時代の一乗寺空也と言えば、他人に興味なし…いや、結城以外の人に興味がなし。

 更に実家の企業に就職すると徹底するほどの完璧主義で登り詰め、父親をさっさと引退させ社長になり、今では日本では飽き足らず世界まで業績を伸ばしている。

 一応、妻はいるが名目上の妻で、それでも一人息子は可愛がっていると聞いたが………やはり、いまだに結城に惚れているようだね。

 年齢が年齢なだけに可愛く見えないはずの一乗寺。しかし、頬を染め一所懸命に結城に話しかける姿は、どこか昔を想い出させる光景で、会場は同窓会一色に染め上る。



 会場内の話題は尽きない。

 空也の登場で「あの当時の生徒会は…」とか、学園内でも美形生徒会として有名だったことから、「今では誰が一番モテるか!?」など、当時を懐かしく想い、ついついお酒の量もすすむ。

 そして酒がすすめば、そこは家庭自慢にも発展することで…。

「ソウちゃんがな…そりゃ、そりゃ可愛くてっ!」

「えっと、確か宗次郎君は今年で10歳でしたっけ?」

「違うぞ、幸江田!!宗次郎君は、10歳と66日目だ!!」

「………」

 別にそんなに詳しくなくてもいいのでは?奈留人があからさまに空也に呆れた視線を向けるが、酒が入り上機嫌になっている英次は違う。

「そうそう!空也はちゃんとわかってくれているんだな〜〜よし!そんな空也に良いものを見せてあげよう!!」

 そう言って、背広の内ポケットから取り出したのは、一枚の写真。



 その写真が引き金となって、今の関係が崩れることをこの時の3人は気付いていない。



 写真に写っていたのは、可愛い女の子………そんな表現では失礼なくらいの美少女であった。

 真っ黒い天使の輪ができるほどつややかな髪、二重に黒曜石のような瞳は優しく輝き、唇は桜色でニッコリ微笑み、肌は白く………そして、なぜか衣装はゴスロリのフリフリドレス。

 英次の家族は妻、双子の男の子と女の子、その下に歳の離れた息子であり、今話題にしていたのはその年の離れた『息子』のはずで………。

「ゆ、結城ぃ!」

 思わず語尾が上がってしまうが、それより早くその写真に喰いつくものが。

「英次先輩!!宗次郎君をオレの息子の嫁にぃぃ!!オ、オレの息子は宗次郎君と同じ歳だし、見た目もオレに似ていい男に成長すると思います!!えっと!嫁はちょっと早いから婚約者ってことで!!―――」

 その後も何やら力説し始める空也に………思わず、なぜか対抗意識を持ってしまったのが奈留人。


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