男前なんかじゃない!!2
003.男前は遺伝。(Side.翠)
「あ、そう言えば、『結城君を息子の嫁に』っと、言ったのは私だけではなかったな…」
ぎょっと、理事長の顔を見つめると…。
「昔、結城父はカリスマ的男前な生徒会会長として、三ツ谷学園で絶大な人気を誇っていた。ある年、1つ年下の某有名会社の息子が入学して来て、彼は学生時代何度も結城父に告白し玉砕している。今では『友人』になっているが、私と同じ発言をしたため、彼も結城君との接触を禁じられているんだ」
結城のお父さん………たぶん、素で『男前キャラ』で会長を務めていたんでしょうね。
カリスマと言われるということは、今の結城の上をいっていたのでしょうが、その分惚れられかたも凄かったのが想像できる。
それにしても、結城のお父さんの後輩…何やら嫌な予感がします。
私が、そう考えていることなどおかまいなしに理事長は続きを話す。
「たぶん、今でも男として惚れているんじゃないかな?今でも、同窓会の会場スポンサーになっているくらいだし…。で、その彼は今、息子が結城君に告白して玉砕したと知って何やら複雑な心境らしいよ」
息子が結城に玉砕!?………まさか!?
「一乗寺も息子2代で結城親子に振られるとは、さすがに、哀れというか…DNAの神秘で同じことを繰り返してしまうのか…本気で同情してしまったよ。と、あれれ?名前出しちゃったね。葉山君、これは、一乗寺君も知らないことだから、一乗寺父のことは内緒にしていてね」
ニッコリ微笑む理事長に、確信めいた言葉が浮かぶ『確信犯』だと。
結城のお父さんの親友と言うことは、それなりに一乗寺のお父さんとも付き合いがあるはずの理事長…。もしかしたら、一乗寺のお父さんとは仲が悪いのか?
それにしても、その息子である一乗カイリの振られた情報まで理事長は掴み、そして暴露するその性格………理事長だけは、敵に廻さないようにしましょう。
その後、結城に事情を説明し理事長室に来るように告げる。
結城からは「何でぼくの性格を理事長が知っているのぉ〜〜〜」と、ケータイの受話器越しに情けない声が聞こえたが、その理由を話すとたっぷり10秒間沈黙し、次には「父さんのばかぁ〜!」なんて、可愛らしい声が響いていた。
こんな楽しいケータイでの会話を繰り広げている私達を横目に、理事長はどうやら風紀委員長である蘇真先輩を電話で呼び出しているようだ。
生徒会会長と風紀委員長の呼び出し………。
何か学園にとって問題ごとでも発生したのだろうか?
私のこの考えは、あながち間違いではなかったのだが、それほどの問題とはこの時の私や結城や蘇真先輩は思っていなかった。
「私の甥がこの学園に転入してくることになった。彼は、一言で言ったら、『台風』などという可愛いものではなく、人をかき混ぜるだけ混ぜて混乱の渦に陥れる問題児だ」
「す、すごい人…」
結城の素直な言葉に、私は蘇真先輩も何ともいえない表情で理事長を見つめる。
「できるだけ、甥には注意を促すが、それでも生徒会や風紀委員に迷惑をかけるかも知れない。すまないが、学園のことしっかりまとめあげてくれ」
ガバリッと、勢いをつけて頭を下げる理事長に、さすがの私達も「はい」と、しか返事できず、お互い連携をもちことの対処にあたるとだけ確認するにとどまった。
この時の私は、このやっかいな転校生をいかに結城に近づけないか、としか考えていなかった。
それは、蘇真先輩も同じでお互い目線で頷きあい、この対処は結城以外の生徒会役員や風紀委員であたることを無言で確認した。
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