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男前なんかじゃない!!2
061.主人と偽駄犬。(Side.卓磨)

 カイリと共に歩き、うしろから付いて来ている北瀬を覗き見る。

 カイリが突然、枯葉頭(仲谷)のスパイと紹介した北瀬は、不良顔で目元がきつく不満顔に見えた。

 だから、無理やりやらされているのだと思っていた。しかし、それは日々接しているうちに違うと気付く。



 生徒会役員…補佐に選ばれた北瀬は、毎日のように生徒会に起こっている問題を一手に引き受け、且つ、アドバイスをもらうため前生徒会に頭を下げ回った。

 北瀬自身、生徒会補佐をするのも初めてで、双子右左に教えを乞うことも忘れず、メモを片手に真剣に聞くその姿に何とも言えない微妙な風景になるが、カイリだけはニンマリ笑い。

「卓磨、オレは偽駄犬を一匹確保したと思っていたが、案外コイツは化けるぞ」

 その言葉に俺は、将来カイリの右腕になるつもりであるので、真剣に考えてみる。

 『偽駄犬』…それは、北瀬が不良でないことを示しているのか?カイリは北瀬に何かを求めている?

 まだカイリの考えは読めないが、これは会長…今は結城君にとって良いことなのだろう。

 カイリは、まだ結城君のことが好きなのか?いや、もしかしたら、その思いを振り切り、今は親友のように感じているのかも知れない。

 思わず、カイリの父である空也(くうや)様のことを父から聞いたせいか、笑いが漏れる。



*****

 夏休み中、父に内緒だよって、茶目っ気たっぷりにウインクをされ、昔話を語ってもらった。

「昔、三ツ谷学園高等部にそれはものすごい美形の男前が、生徒会会長として君臨していた。それに批判轟轟だったのが、空也様。一年後輩であるものの一乗寺グループの跡継ぎ。意気揚々と生徒会に殴り込みまがいの特攻をかけ………あっさり撃沈された。その後、あまりにも説得力あり、包容力がある会長に空也様が惚れたんだ」

 空也様が惚れる相手…そんな人もいるのか!?

 それが俺の素直な感想だったが、父は1つ頷き言葉を続ける。

「それは、今も変わらないよ。しかも、十数年経って、同じ状況になっているカイリ様に何とか自分と同じことにならないように願っていた。っと、言っても、聞いたところによると、葉山社長の息子に持っていかれたらしいから、かなり嘆いていたねー」



 父の言葉に一瞬、目を丸くして絶句したのを覚えている。

「私は空也様より2歳離れていたから、当時、その時の会長に会いすることはできなかったけど、今は仕事柄お目にすることがあるよ。何を考えているのか、結城さんはうちのライバル会社にいるからね」

 そう父が言葉を締めるが、その当時の三ツ谷学園の生徒会会長が誰を指しているのか解って。

 歴史は繰り返す………などとは言わないが、カイリ、何も父親と同じ境遇に合い、且つ、同じように敗れるとは…。

 カイリに同情するとともに、なぜか結城会長の父親に会ってみたいなっと、密かに思っていた。

*****



 カイリの隣に歩き、進む先には生徒会室。

 問題が起こって呼び出されているが、実は明日、ある人と出会える喜びから、それほど苦に思っていない。

 昨日、父からケータイに電話がきた。

 ケータイから面白がるような父の声を聞きながら、俺も知らず笑顔になっていることに気付いていない。



「一つ情報をあげるよ、可愛い息子のためにね。文化祭3日目に空也様がそちらに行くそうだ。これは、空也様がカイリ様に会いに行くという意味ではないよ。空也様が恋焦がれている相手が、そちらに向かう情報を得たからだよ」



 文化祭3日目。………何があっても2年1組のワッフル屋に駆け込もうと心に誓う。

 面白いことが起こるよ、カイリ。そのためにも、生徒会の問題は今日と明日中に片付けよう。


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あきゅろす。
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