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男前なんかじゃない!!2
060.偽駄犬。(Side.カイリ)

 オレがたまたま通り掛ったのは偶然であるが、のち、この出会いに感謝せずにはいられない。



 校舎裏をたまたま通り掛った時、その声は突然聞こえてきた。

「違う!あの人のあの部屋はああでも、あの人が一番にこの学園を思って!」

「何が違うのさ!生徒会会長が少女趣味?あんなのボク達があこがれる会長じゃない!」

 1人の背の高いガタイのいい男に数人の背の低い小柄な男達…。

 いじめにもならないと思っているが、聞こえた内容に思わず足を止める。

 今、学園中に宗次郎の乙女部屋がバレてしまっている状態で、その宗次郎を庇っている人物に興味があった。(※47話目あたりの出来事です)



 そんな中、小柄な生徒達がオレの姿を見た途端、明らかにマズイ!というような表情をし逃げていく。

 残されたのは、目元がキツイ一匹狼の不良………北瀬須王。

 キツイ目元がわずかに下げられ、情けない姿をしているのに疑問を感じる。が、オレが側に近づくと、「すいません!」と、90度に身体を折り曲げ、どこの体育会系だー!と、叫びたくなるほどきれいな謝罪をする。

「何のことだ?」

 思い当たる節がなかったオレの質問であるが、北瀬は頭を下げたまま理由を上げていく。

「今回の騒動、コウのせいだと思うから…。俺がちゃんとコウと一緒にいたら、結城会長はこんなことには…」

「どういうことだ?」



 その後、頭を上げた北瀬は、話すことは得じゃないのかポツリ、ポツリとゆっくりオレに理由を話す。

 謎メールが送られた前の日、突然、仲谷と別行動をとったこと。その後、部屋に帰って来た仲谷はやけに機嫌が良かったこと。

 こんな話を聞かされて、オレの眉間に皺が寄っていくが、北瀬は力なく「でも、証拠がなくて…」と、呟くようにして言う。



 ふと、ここで北瀬のこれまでのイメージがかなり崩れているのに気付く。

「北瀬、お前不良だろ?しかも、仲谷に惚れていて今は喜びいっぱいのはず…て、なにそんなにしかめっ面してんだよ」

 俺の言葉にだんだん吊り上って目が鋭くなり、眉を顰めているが、どう見てもしかめっ面に見えて突っ込んでやると、妙にビックリしている北瀬。

「えっと、俺の顔ってそんな風に見えるんですか?」

 驚く北瀬に当たり前だろって表情をオレがすると、眉をこれでもかというくらい下げている駄犬………じゃなく北瀬がいて…。



 理由を聞けば納得っと、言うか、不幸顔であることが発覚する北瀬。

 幼い頃より目つきが悪く、それを理解して接してくれるのは親兄弟のみ。

 他の人はっというと、その目つきの悪さから、不良というレッテルを貼り、地元中学に進学する際、かなり周りと揉めたとかで、この学園の中等部に受験することにしたとのこと。

 確かに目つきさえなければ、黒い髪とピアスの穴のない耳、少し着崩れているものの普通の一般生徒と変わらない制服姿。

「目つきさえなければ、平凡クンで通りそうだな…」

「目つきのせいで、喧嘩は売られることがあるから多少は強いけど、風紀のようには強くない、です。性格は………一乗寺先輩の言うとおり平凡かも…」

 オレの言葉に素直過ぎる返答の北瀬。



 ついでに北瀬に仲谷のことを聞くと、これは首が振りきれそうなほど横に振り。

「ち、違います!!俺、仲谷のことそんな風に思っていません!高等部らか転校して来て、あの容姿で友達できるのかと不安で一緒にいたら、なんか『親友』って、言われて………なんでか、こんなことに…」

 ほぼノンストップで言う北瀬に思わず、笑みを浮かべ、その後、俺はこの偽駄犬を手に入れることになる。

 北瀬のほうも「オレに協力しろ!」と、理由も言わないこの言葉に質問することなく大きく頷く。

 あの枯葉頭の側にオレのスパイが1人潜り込む。

 できそうで、できなかった手駒を手に入れて、ニンマリ笑みを浮かべるが、この偽駄犬(北瀬)は予想外にできる奴で、その後、オレは北瀬を偽駄犬から化けさせる計画を持ち始める。


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あきゅろす。
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