男前なんかじゃない!!2
002.ネタ明かし。(Side.翠)
突然の理事長からの呼び出し。
もちろん、これを受け取ったのは結城だが、当の結城は、まだ理事長に本来の性格がバレていないせいで、理事長室に向うのを躊躇っていた。
「父さんと理事長は、ここの兄弟校、三ツ谷(みつや)学園の同級生で友達なんだって…。だから、ぼくの編入もここに決まったんだ」
生徒会役員がこの言葉に『なるほど…』などと思っていると、結城からは「でも、ぼくの『クールキャラ』が崩れると怖いから、理事長に一度も逢ったことがない」と、シュンッと項垂れたように背を丸くする。
それでは、編入の挨拶は誰にしたんだ?っと、皆突っ込むと結城からは、「理事長は、その時出張中で、替わりに秘書さんに挨拶したんだ」と、満面な笑みを浮かべていた。
『ついていましたね、結城』
誰しもそう思っていた。
そう、理事長は結城の本来の性格『乙女キャラ』を知らないはずでしたのに…これはどういうことです?
ごまかしきれないほど確信めいて話す、理事長。
さすがに、私も顔色を変えたせいで理事長は、苦笑いしなからネタを明かしてくれる。
「私と結城君の父との関係は知っているかい?」
「は、はい。たしか、同じ年の友人で兄弟校の三ツ谷学園の卒業生だと…」
「うーん、本当は『友人』ではなく『親友』なんだけど、そのことを結城君は知らないからなー」
『親友』?結城からは、そんな話し聞いていないが…。
私が不思議そうな顔をしていると、理事長は頭を掻きながら、「実は、昔、結城君がかわいくて、息子の嫁に…なんて、ことを言ったら、結城君に逢うことを禁じられてね………」との言葉を呟く。
結城は、男ですけど………一瞬、口に出そうになった言葉だが、結城は今男である私の恋人である訳で、ここでは口にしないほうがいいですね。
私の沈黙に理事長は、なんとも言えない顔をしているが、続きを話し始める。
「と、『親友』はさて置き。同級生ということは、同窓会なんてのもあってね。その度、結城は………と、これでは結城君と被るから結城父は、結城君を自慢していた訳」
結城を自慢………したくなりますね。結城は、中学3年の秋に成長期がこなければ、女性も素足で逃げ出したくなるほどの美少女ぶり(男だが)だったのだから…。
きっと、結城のお父さんは結城自慢のため、写真などを理事長などに見せていたのではないか?少しうらやましい…。
「もちろん、結城君の乙女思考もその時、耳にタコができるくらい聞いていたからね」
理事長は、これでどう?ここに結城君を呼んでもらえるかい?と、ニコニコ笑いながら、結城を呼ぶよう私に促す。
結城、どうもあなたは余計な心配しているようですよ。案外あっけなく理事長に性格バレてますから…。
この分だと、いったい何人この学園で、結城本来の性格を知る者がいるのやら…。
こっそり、ため息をついていると、理事長から爆弾発言がここで飛び出す。
[☆乙女に戻る][★男前に進む]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!