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男前なんかじゃない!!2
054.引退式。

 最後の矢が中央ど真ん中に当たり、真弓先輩は大きく息をつく。

 パチパチパチパチ。

 ぼくが思わず拍手すると、照れるように金の髪をガシガシ掻く真弓先輩。

 タオルを真弓先輩に渡すと、汗を乱暴に拭いていく。

「さすがに、真夏の真昼間に道場はないな」

「はい、でも、とっても素敵な引退式でした」

「惚れたか?」

「あっははは、そうですねー。スイちゃんに逢う前なら惚れていたかも…」

 ぼくの言葉に真弓先輩は、それは失敗したと、いつものようにぼくの頭を強めに撫で、弓道部道場をあとにする。



 最後に真弓先輩が、道場に深く頭を下げていたのが印象的だった。

 あぁ、真弓先輩も3年生…あと、少ししか一緒にいられないのか…。

 そんな寂しい気分にさせる、夏のある一コマ。



 その夜。

 引退式………その余韻に浸っていると、スイちゃんがぼくを側にきて優しく抱きしめる。

「蘇真先輩の引退式は、楽しくなかったのですか?」

 スイちゃんの言葉に首を振るけど、寂しさは隠しきれない。

「結城、みんな卒業しますが、私はまだ一緒です。あと一乗寺も一緒ですし、別れてもきっと心で繋がっています。それに…そうですね。このような長期休暇の時、みんなで遊びに行きましょうか?」

 思わず頷くと、スイちゃんがぼくの顎を掴み軽くキスをする。

 部屋が狭くなったせいで、スイちゃんとの距離も近づいてイチャイチャする日も増えている。



 生徒達の中には、本当にスイちゃんが、そのー…ネコさんなのか疑問の声が上がっているけど、いつかそれも言ったほうがいいのかな?

 でも、そんなの恥ずかしくて宣言できないし、ずっとこのままでもいいよね。

 親衛隊のみんなは、ぼくの性格がこんなんでも優しくしてくれる。もちろん、スイちゃんの親衛隊のも!

 生徒会役員の部屋を引っ越す時には、荷物を詰めるのも手伝ってくれて、お礼にぼくの手作りぬいぐるみをプレゼントしたらすごく喜ばれた。

 たまに料理教室とか一緒に開催して、親衛隊ともますます仲良くなっています。スイちゃんも毎回試食しに来てもらうから、みんな気合がはいるしね。

 ぼくは中学生の時、女の子と一緒にいる気持ちみたいで、恋のお悩み相談とかまたにぼくの悩みを聞いてもらったり…ほんと親衛隊のみんなは優しいよね。



 夏休み中は、こんな感じで…いつもと一味違う夏休みを味わう。

 生徒会会長に未練はないのか?と、問われればぼく自身なんと答えていいかわからない。

 でも、今はゆっくり休んでもいいんだと思える。

 ぼくには、大切な恋人やたくさんの友達や仲間がいるのだから…。


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あきゅろす。
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