男前なんかじゃない!!2
000.招かざる者。(Side.?)
※序章は裏事情なので、主人公は全く登場しません。。。
「あなたは、愛されて当然なの!」
「うん、お母さん」
ヒシッと、効果音がつきそうなくらい強く抱きしめあっている親子。
傍から見たら、「お前、マザコンかぁ〜」と、言われかねない光景だが、母親である女性は、きれいな顔立ちの20歳台で通りそうな外見に、子供のほうは、母親に似たかわいい顔立ちをした男の子であったため、発言はともかく微笑ましい光景と言えた。
親子がいる場所は、某学園高等部正門前なのだが、親子以外に人影はなかった。
「こんな学校こっちからお断りだわ!光輝(こうき)、こんな学校さっさと転校するわよ!」
「で、でも、オレ、こっちで友達になったヤツたくさんいるし………悪いのは生徒会のヤツ等だけだよ。ソイツ等を追い出せたら、元通りに戻るし………お母さん、どうにかできない?」
光輝と呼ばれた少年は、母親に目をウルウルさせて訴えるが、母親からは良い返事が聞かれない。
「光輝、あなたのお友達も生徒会に誑し込まれたのよ。もう、あなたに逢いたくないって―――」
「嘘だ!!きっと、何かの間違いだよ!生徒会の連中が俺を悪く言って、みんな誤解しているんだよ!」
「そうね、彼らもきっと落ち着けば、光輝の良さもわかってくれるけど…今はダメよ」
「でも………クッズン…」
光輝の目からとうとう溢れだした涙は、地面のアスファルトをボツリポツリッと濡らしていく。
それを見た母親は、先ほどまで怒りで吊り上っていた眉を今度は下げ、息子のために何ができるか考え始める。
パン!
「そうだわ!転校先は、ナルちゃんのところにしましょう!!そこでは、きっと誰もがあなたのことを愛してくれるわ!!」
母親は手を叩き名案だとばかりに、息子に提案する。
「『ナルちゃん』って、奈留人(なるひと)叔父さんのこと?」
「そう、ナルちゃんは、お父様の持つこことは違う学園の『四ツ谷(よつや)学園』を譲り受け、そこの理事長をしているのよ」
「『四ツ谷学園』かぁー。そこで、オレは愛されるんだね!!」
光輝は、たった今まで校門内にいる友達と会えなくなることを悲しんでいたとは思えぬ満面な笑みを浮かべた。
招かざる者が、四ツ谷学園に向おうとしていることを、この時まだ誰も知らない。
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