男前なんかじゃない!!2
001.生徒会。(Side.奈留人)
四ツ谷学園理事長、幸枝田奈留人(さちえだ なるひと)は、一通の書類にため息をついていた。
これはどう考えても、難問………。
それもとても厄介な問題であり、できることなら投げ出したいものなのだが、これを送りつけてきた人物(自身の父親)を思うと、拒否権はなさそうに感じる。
重たい空気が張りつめている中、それを破るように扉にノックの音が響いた。
トントン…。
「入りたまえ」
ノックの音に答え招き入れると、そこには四ツ谷学園高等部の生徒会副会長が、きれいな笑みを浮かべお辞儀をしていた。
「失礼します」
相変わらず、美しい立ち姿だ。
私は、彼とよく似た人を知っているが、顔形は似ていても彼のほうが好感を持てた。
中等部の頃から生徒会に入り、その美貌もさることながら仕事振りは完璧主義をとおし、生徒会会長などよりも仕事ができる有能さもかねそろえていた。
まぁ、その頃の生徒会は、世界的有数企業の跡取り息子の一乗寺君が会長を務めていたため、近年まれに見るほどの人気と実績を中等部生徒会の歴史に刻んでくれたのだが…。
おかげで、昨年、今年度の中等部生徒会は誰とも言わず、物足りなさを感じている。
今年度の中等部の会長や副会長も、頑張っているようなんだけどね…。
しかし、2年前の会長の一乗寺カイリ(いちじょうじ かいり)君や副会長の葉山翠(はやま みどり)君を知る者は、まだ残っているからどうしても考えてしまうんだろう。
「理事長、今日はどのようなご用件で?」
『用件は、簡潔に話して下さいね』…葉山君から副音声のような声が聞こえてきた。
これも、以前から感じていることだが、端的に仕事をこなそうとしている様子が伺える。
「相変わらずだね…」
「え?」
「いやいや、こっちのことだよ」
どうも、昔を思い出していたら、中等部の頃の葉山君まで思い出してしまっていた。
そう、ここに立っているのは、高等部生徒会副会長、葉山翠。今年2年に進級し、今年度の10月の体育祭までは、副会長を務めることになるのだろう。
今は6月なので、10月にまた次期生徒会選挙という名の体育祭が開催されるが、葉山君はきっと生徒会役員にまた選ばれるだろう。
優秀だからね、君は。
そして、葉山君の上にいる高等部生徒会会長の彼も頑張っている。見た目は【男前】、しかし中身は………。
「さて、葉山君。私は君ではなく、会長である結城君を呼び出したつもりなのだが、なぜ君が来たのだろう?」
コツコツ…。
指で机を鳴らし、問かけると葉山君はいつもどおり、詰まることなく理由を話す。
「会長は、今日中に仕上げなければならない書類がありまして、急遽、私が来ることになりました」
「そう、彼はいったい何を仕上げるのだろうね…。出来上がりが楽しみだよ。今回のパッチワークのテーマは、たしかカントリー風だったかね、葉山君?」
私の言葉に珍しく顔色を変える、葉山君。
珍しいモノを見た御礼にネタ明かしでもしてあげましょうか?
[☆乙女に戻る][★男前に進む]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!