男前なんかじゃない!!2
035.報告書。(Side.卓磨)
無気味に笑みを浮かべ、「これから行われる緊急集会を放送で流して来ます」と、言って生徒会室を颯爽と出て行く副会長。
この頃、無表情を身につけ、その無言の迫力も結構素でみんな怖がっていたが、こちらの笑顔のほうが数段怖いように感じる。
結局、風紀委員長である蘇真を呼び出した理由や緊急集会で副会長が、何をたくらんでいるかは教えてもらえなかったが………これで、仲谷の最後となることを祈るしかない。
一乗寺グループを背負う予定であるカイリの睨みにも、双子右左の追及にも、風紀委員長である蘇真にも秘密のたくらみ。
とても、面白い………ゴホンッ、面倒な集会になりそうだと、思わず頬が綻ぶ。
バサッ。
蘇真がちょうどいるので、今まで裏で調べいた資料をテーブルに広げる。
本当はカイリにいの一番に知らせるのが普通だが、これから風紀委員が活躍するのであれば、このことを知らせたほうがいいだろう。
「なんだこれは?」
カイリが、一枚紙を取り上げると同時に眉を上げる。
「中谷光輝に関する報告書…ですが、カイリどうです?なかなか面白いことが書かれているでしょう?」
【仲谷光輝(なかたに こうき)…15歳、三ツ谷学園(共学校)に入学するも、1ヶ月後に四ツ谷学園(男子校)に転校。
三ツ谷学園にいる生徒会役員全員が、プライドという族に所属している。仲谷もその一員であるが、『狂蝶(きょうちょう)』と呼ばれかなり暴れていた。
仲谷のその暴れる様に危機感を感じた生徒会役員は、その後、族から抜けるように勧告するも、それにキレれた仲谷が生徒会副会長である女子生徒に怪我を負わせ退学になる。
そもそも、三ツ谷学園でも仲谷は、自分勝手な性格で周りの生徒にも嫌われる傾向にあった。
容姿はかなり良かったため、いじめなどには会うことはなかったが、三ツ谷学園の理事長である祖父も手に余る存在。
先日、真夜中に転校先である四ツ谷学園を抜け出し、街で暴れたという情報もあり。】
最後の文面を見た、蘇真の目が鋭くなる。
まぁ、これで気付かないほど馬鹿ではないはず。俺はこくりと頷き、無言で『肯定』の返事を返す。
「蘇真が今考えているのは正解。どうもあの時、葉山に振られまくっていたうっぷんを蘇真のグループで、発散したようだよ」
「舐めやがって!」
今にも仲谷を殴りに行こうと思っている蘇真を手で制止し、首を振る。
「止めとけ。生徒達に被害が出るかもしれない」
「ショキ、どうしてさー!☆」
「風紀委員にボコッてもらえば、全て収まるじゃん★」
俺の言葉に不思議そうな顔をして聞いてくるのは、双子右左。隣にいるカイリも俺の言葉に眉間に皺を寄せるが、そう簡単な人物ではないのだ、仲谷光輝という人物は…。
「三ツ谷学園で仲谷に怪我を負わせた女子生徒は、女性でありながらプライドの副総長を務めていたました。もちろん、それは喧嘩込ですよ。それがこうもあっさりやられたのは、仲谷が異名の通り、狂った蝶のように暴れまくり他の生徒を庇ったための怪我らしい…」
もしかしたら、副総長を務めているほどの女子生徒が周りを気にせず、仲谷と本気で渡り合っていたらここまで怪我をすることもなかったかも知れない。
それでなくとも、調査報告書に上がっている三ツ谷学園で仲谷が暴れ壊した物や軽傷人員などの人数を聞くと、三ツ谷学園の理事長に胃薬など差し入れしたいほどだ。
三ツ谷学園の理事長は、この四ツ谷学園の理事長の父。そして、仲谷の祖父にもあたる。
三ツ谷学園は歴史が古く、共学校でそれなりの上流階級の学校とされている。
それが、孫にその伝統云々を壊しかねない状況に頭を痛めて、退学通知をしたのは想像できるが、それをなぜ息子の学校(四ツ谷学園)に仲谷を押し付けるのか…。
カイリが許すのなら三ツ谷学園など取り壊し更地にしてやりたい!
しかし、今は三ツ谷学園の二の舞を踏まないためにも、風紀委員を止めるのが先だ。
三ツ谷学園のことをこの学園で再度再現などさせるというなら………さすがの風紀委員も無傷ではすまないはずだ。
「………二条、それではオレ達の怒りはどこに持っていけばいい?」
今にも俺に飛び掛かり殴りつけそうな極悪人面の蘇真…。
そんなの知るか!!と、言いたいとこだが、解決策がある。
「さっき、副会長が言っていたことを歪曲して、緊急全校集会で仲谷を押さえつけるフリして、軽くボコッておけば?」
俺のこの提案に思わず、この場にいる男どもの顔がニヤリッと笑う。
いまだ葉山はいまだ放送室から戻らない。そして、この場を唯一止められそうな会長も仮眠室から出てこない…。
生徒会室は今不穏な空気が流れているが、誰一人としてそれをとがめる者はいなかった。
と、いうか、皆「頑張れ、風紀委員!!」の空気が流れているのだけどね。
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