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男前なんかじゃない!!2
033.転校生くんの恋人。

 あのカオス状態になる前の話しを少しでもぼく達が思い出していたなら………。



「宗次郎と別れてオレと付き合うよな!!」



 転校生くんが発した言葉…それをどのように脚色すれば、このようになるのか………今、噂は最終局面を迎えていた。



「見た見た、仲谷くんの顔!!キレー!!」

「見た〜。しかも、アノ噂!?」

「あぁー!アレでしょ?『葉山様が宗次郎君を振って、今仲谷くんと付き合っている』って噂!?アレほんとなの!?」



 誰か嘘だと言って下さい。



 生徒会室では、ぼくの泣き声が響く。

「うぅぅぅ〜、グズッグズッ。ぢがうもん、スイぢゃんば…スイだゃんば!、グズッ、ううぅぅー」

「あぁー、うんうん、僕等はちゃんとわかっているから、ね、左京☆」

「うん、ソウちゃんと副会チョーは、ちゃんと今もお付き合いしているからね★」

「うわぁーーん、でも、でも…生徒達は、ぼくのこと振られ男だと言って、スイちゃんが転校生くんとお、お付き合いしているってーーー!!えっぐ、うっく」

 双子の慰めは嬉しいけど、噂が哀しく本格的に泣き始めた、ぼく。涙が止まりません。

 袖でごしごし涙を拭いていると、目の前にはきれいな水色のハンカチが…。

「すみません、結城。噂は責任を持って消しますから、今は辛いでしょうが耐えて下さい」

 スイちゃんが眉を下げたまま、ハンカチを差し出してくれる。



 スイちゃんが悪い訳じゃないのに…。

 噂の発信源は転校生くん。それを信じたのは派閥の人達…。

 派閥の人達は、以前、可愛い時のスイちゃんを姫扱いしていた人達だ。

 無愛想なぼくより、転校生くんとスイちゃんのほうがお似合い………なんて、思ったようで、今ではスイちゃんとの仲を涙を流しつつ応援し、そして、噂が流れ出した。

 誤解、勘違い!!…なんて言葉、あの人達には通じないので、生徒中に広がるだけ広がり、ぼくは現在スイちゃんに振られた、『振られ男』のレッテルを貼られている。



 もう!派閥の人達も何スイちゃんと転校生くんの仲をオッケーしているんだよ!!

 恋人候補として、最後までがんばってくれてもいいじゃないかーーー!!

 なんて僕が愚痴っていたら、みんなからは、各委員長や運動部部長は『恋人候補』と名乗っていても、恋心は薄っぺらいもの………簡単に他に譲ってしまう壊れやすいものなんだって。

 しかも、転校生くんが恋人になったと主張しているのは、中等部時代憧れの的であった『葉山翠』………これは、派閥の人じゃなくても諦めるしかないよね。



 涙が涸れることのない、ぼく。そのあと、仮眠室にスイちゃんと入り、泣きながらいつの間にか寝てしまった。

 夢なんか見ない。見たって哀しい夢ばかりだから………。

 ぼくが眠るまで、ずっとスイちゃんが背中を撫でている感触がする。嬉しいはずなのに…なんでかな?ちょっと、切ない気分………。


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